「国境なき医師団」の半分はノンメディカルでできていた!
それを何年か続けているとある年、つまり私が世界各地へと取材を始める前の2015年、当の「国境なき医師団」から取材が来ました。寄付者にインタビューする新聞のシリーズなのだと説明がありました。一も二もなく私はOK。ともかく彼らの役に立ちたかったということもありますが、何より憧れの「団」の方に会えるのが楽しみだったのでした。
待ち合わせの喫茶店には、広報の女性と、インタビューを載せる新聞の方がいたと記憶します。
挨拶して5分ほど、まず広報の方が資料を開きながら「弊団」がどういう成り立ちをし、どういう活動をしているかの説明(のちに各ミッションを見に行くと、こうした「ブリーフィング」が必ずあるとわかる)をしてくれました。
その説明には、私が聞いたことのない事実がたくさん含まれていました。
驚いた私は当然質問をします。
すると回答がまた知らないことだらけなのです。
例えば読者の皆さんも、「国境なき医師団」は医療関係者だけで構成されているのではないとご存知でしょうか。細かい数字はまたのちに挙げますが、ほぼ半数が非医療者です。彼らはノンメディカルと呼ばれます。
ノンメディカルの中には、紛争地や災害地に駆けつけてすぐテントなりコンテナなりを建てる、いわば建設業のような人々がいます。
それから常に最も大事なのは「水の供給」ですから、タンクやポンプ、それを仮設の病院や避難所へ引いてくるパイプがなければいけません。それなしでは患者さんの命も、助けにいった医師たちの命も助からないからです。
もちろんただの水じゃありません。衛生的に安全を確保された水で、それがいつでも補給されるシステムが必要です。菌の発生がないかチェックし、消毒するのも「国境なき医師団」です。それらは清潔な飲み水と、手術などに使用できるレベルの水などに分かれます。「 ウォーター&サニテーション(水と衛生)」はこうして過酷な活動地での基本中の基本で、「WATSAN」と略して呼ばれるくらいの重要事項です。
電気の確保も同じです。紛争地の砂漠で、ノンメディカルは自家発電を行わねばなりません。それは空調とつながって新生児を救い、怪我人を癒します。あるいは重要な薬剤は常に一定の温度で保管されなければ効果を失ってしまいます。
医師や看護師は、彼らノンメディカルの徹底したバックアップがあってこそ十二分な活動ができるのです。