2019.09.14
# 企業・経営

夢のリニア中央新幹線、乗ってみてわかった「実現への不安」

まだ道のりは長そうだ
川辺 謙一 プロフィール

とはいえ、参加者の多くは、乗車体験に満足しただろう。1区画(2席)4,320円(税込)という料金を払った上に、抽選をパスして当選し、交通の便がよいとは言えない場所にわざわざ出向いて試乗したら、それを「いい思い出」にしたいと思うのが人情だ。試乗したいという気持ちが大きいほど、時速500km走行を体感できたことで満足し、乗り心地までは気にならない可能性が高い。

そこで今回の乗車体験では、超電導リニアにほとんど興味がない被験者として、筆者の妻に同乗してもらった。妻は、想像以上に乗り心地が悪かった上に、降車30分後まで「耳ツン」に悩まされたことから、「超電導リニアには二度と乗りたくない」と言っていた。

 

技術的・歴史的な挑戦

実は、こうした乗り心地の悪さについては、報道陣が初めてL0系の乗車体験をした直後にメディアが報じている。そのためか、JR東海は、2018年4月にオープンさせた「リニア中央新幹線サイト」のFAQで、「現行の新幹線と比較して乗り心地はどうでしょうか」という質問に対して、「超電導リニアの乗り心地は、現行の新幹線と比べて、同じ速度域で同等レベル以上にあることを確認しています」と回答しており、時速500kmでの乗り心地については明言を避けている。

ここまでは、乗り心地について述べてきた。次は、それ以外の視点で超電導リニアを俯瞰し、その実現性を考えてみよう。

そもそも超電導リニアは、技術的にマニアックだ。その要となる超電導磁石は、コイルを摂氏マイナス269度という極低温に冷却する必要があるし、「クエンチ」と呼ばれる現象が発生すると、磁力が急低下する。

そのような特殊環境が必要で、性能が不安定な技術を、室内に静置する機器ではなく、信頼と実績をとくに重視する鉄道車両に導入する。しかも、鉄車輪の代わりに車両を支える重要な役割を担わせ、走行中に発生する振動や衝撃を受け止めさせる。これは、技術的にかなりの「挑戦」だ。

写真1 超電導リニア車両・L0系(筆者撮影)

また、歴史的にもマニアックだ。世界の鉄道史を繙けば、従来の鉄輪式鉄道の弱点を克服しようとさまざまに走行システムを変えた鉄道が開発されてきたが、その多くが淘汰され、結局鉄輪式鉄道が長らく生き残ったことがわかる。超電導リニアの開発は、こうした歴史の流れに逆らう「挑戦」でもある。

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