時代錯誤な「中小企業優遇」
歴史に学べば、これからやってくる巨大複合災害が、未有の人的被害だけではなく、深刻な財政危機をもたらし、日本という国のあり方を根底から変えてしまうような大きな「危機」であることは、動かしようのない事実なのです。そんな「破綻」と隣り合わせの地震大国が、GDPに対する借金を世界一の規模で膨らませている。この恐ろしい現実を、あらためて想起させられました。
しかし、日本の産業政策はそんな現実から頑なに目を背け、中小企業を手厚く優遇しています。なかには理解できない優遇策も多くあります。
たとえば、「接待飲食費」ひとつとっても、最大800万円分まで損金として計上できるという優遇措置があります。社員に使わせない限り、中小企業経営者が会社の金を遣って銀座や赤坂で贅沢ができる公私混同と考えるべきでしょう。
労働者は先進国の中で際立って低い賃金しかもらえず、国も社会保障がパンクするほど巨額の借金を抱えている中で、中小企業経営者の飲食をここまで優遇する必要があるでしょうか。
こんな政策で、生産性向上に何の効果がありましょうか。人口減少の対策として正当化できるポイントはあるでしょうか。もっと辛辣なことを言わせていただくと、これは産業政策でもなんでもなく、会社を成長させることができない経営者に資金援助をしてやる「脱税政策」に過ぎません。
日本経済が低迷してなかなか長いトンネルから脱却できないのは、このような時代錯誤な中小企業優遇策を続けているからなのです。