香港デモ、現地各紙の「報じ方」はこんなに違う〜そこから見えること

Session-22×現代ビジネス
倉田 徹 プロフィール

荻上 こういったメディアの違いというのは、香港の方々もかなり詳しく知っているのでしょうか。

倉田 香港の市民は、記事が出た新聞の名前を聞いた時に判断しています。たとえば、リンゴ日報に記事が出た場合には、「それなら民主派寄り」だよねといったように。みんなよくわかっている…というよりも常識ですね。

荻上 日本でも随分、朝日と読売、産経と東京の違いなどは理解されていたりもしますもんね。

 

何がデモを引き起こしたか

荻上 香港ではもともと、雨傘運動や愛国教育反対のような、断続的・連続的、両面から運動が続いてきたわけですが、雨傘運動以降、少し意気消沈したムードがあったように思います。書店に足を運ぶと、雨傘運動の「失敗」について記録した本も並びます。

そんななかで「逃亡犯条例」の反対運動が一気に盛り上がった。それはただの条例反対ではなく、今の香港の行政の在り方を問うようなものになっていますよね。しかも、徐々に盛り上がっている側面があると思うんです。今ここまで盛り上がっている背景を、改めてどうお感じなりますか。

倉田 「一国二制度」の難しさというものが、前面に出てしまっている印象を受けます。香港は非常に特殊な政治体制です。改めて確認すると、「一国」というのは中国、つまり、強力な権威主義体制です。他方で、「二制度」のうち、香港の「制度」の部分はイギリスが残していった社会制度、つまり活発で自由な市民社会です。普通は、こういう「権威主義的政治体制」と「自由な市民社会」というのは、同じ場所には出現しないもの。たとえば、中国に自由な市民社会というのはなかなか根付かない。逆に民主主義国家で強権的な政府は、普通は生きていけない。

ところが、この二つが同じ香港という土地で重なって存在している。両者の間に妥協がなくなると、どこまでも泥沼化した、「やるか、やられるか」の戦いになってしまう――それが現状ではないかと思っています。

荻上 行政も、市民も、中国の中央政府も、それぞれが譲らない状況になっているわけですね。これがどう「着地」するかという点は、本当に読めないですよね。デモ参加者は「五大訴求」、5つの要求を行なっていますが、行政がどう反応するか不透明です。

デモで「五大要求」を行う市民〔PHOTO〕Gettyimages

倉田 読みにくいですね。香港というのは常に矛盾を抱えた社会なんですね。植民地時代からそうですけれども、「イギリスの植民地なんだけれども、本国よりも経済力がある」とか、あるいは「政治的には民主主義はないけれど、自由はある」とか、そういう様々な矛盾と多様性を抱えた街です。

なので、みんなが完璧にハッピーになる答えというのは出せない。三方一両損と言いますか、皆さんそれぞれが譲歩して矛を収める、ということをずっとやってきた街です。「スパッと決着」というのは考えられない。みんながある程度、「涙を飲んで」というやり方でないと終わらないと思います。

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