香港デモ、現地各紙の「報じ方」はこんなに違う〜そこから見えること

Session-22×現代ビジネス
倉田 徹 プロフィール

潜在している「香港市民たちの思い」

倉田 今回の取材で印象的なことがありました。香港島から九竜に移動する際、スターフェリーという船に乗ったんですが、この船を降りるときに、不意に乗客の一人が大きい声で「香港人!」という言葉を叫んだところ、周りにいた人がみんな「頑張れ」という言葉で応じるというシーンがあったんです。

そういうことが何の前触れもなく起きる。普通の香港の人が日常的に使っている交通機関の中で、普通に船に乗っていると思った人が、突然何らかのきっかけで政治的なメッセージを言いたくなってしまう。つまり、日常でもそういう強い政治意識や政治への思いを持っている人が、相当数いるということです。

あるいは、最近話題になっているのは、夜10時になるとマンションの窓を開けて、そこから外に向かって大きい声で「香港人!」と叫ぼう、という呼びかけです。それを受けて向かい側にいる人が「頑張れ!」と叫び、そのやりとりが何十分も続くということが、場所によってはあるようなんです。今の香港では、日常にこうした政治が隠れているし、そうした政治意識は、すべてが暴力的な行為によって、過激なやり方によってのみ表されているわけでもない。

この両方の側面を見落とすと、やはり政治の方向性が間違ってしまう。これは危険だと思います。

 

荻上 なるほど。それと、衝突地域に足を運んで痛感したのは、イエローベスト、つまりメディアの関係者がデモの現場にたくさん訪れることの効果です。それは一定の抑止力にもなりうるし、一方で舞台化による「触発」の誘導――つまり、カメラが向いてるから普段よりもちょっと大きく振る舞ってみようといったこと――にもつながりうることです。メディア自身も、そうした関わりに対して、自身のあり方を問いながら取材をするような現状があるでしょう。

倉田 メディア側が公平に報道することはもちろん重要です。一方で、報道に触れる人々、テレビや新聞を目にしたり、ラジオを聞いたりしてる人たちにも、報道を通して見えるもの聞こえるものをそのまま受け取るだけではなく、実際にその現場がどうなってるか想像する姿勢が必要になってくると思います。

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