笑わせてるんじゃなく、笑われてるだけ
そうやぁ、それでええやん(笑)!
「小学3年生まで、私は、運動がめっちゃ苦手で、走るのも遅かったし、体育の授業が嫌いでした。でも、運動会で障害物競走に出ることになって、スタートしてすぐ鉄棒の前周りをしなきゃいけない。クラス12人中、私だけ鉄棒の前周りができなかったのが申し訳なくて、運動会のために毎日練習しました。
土日は学校まで親についてきてもらってひたすら前周り。友達からは、持ち運び用の鉄棒を借りたりして、家でも練習して、ようやくできるようになった。『できた!』と思ったら、今度は鉄棒が大好きになって(笑)。いろんな技ができるようになったんです。
体育以外の勉強でも、先生は、『わからない子がいる時は、全員がわかるまでみんなで考えよう』という教育方針を貫いていました。一人一人を大事に見てくれた。個性を大事に、学校も家族も丁寧に面倒を見てくれたんです。だから、全員テストは100点でした。
最初はわからなくても、教えてもらえれば、だんだん勉強の内容が、スーって入ってくる。お陰で、国語にも算数にも理科にも社会にも苦手意識がなかった。頑張って勉強しているっていう感覚はなくて、教えてもらって、できなかったことができるようになる。知らなかったことを知れるようになる。毎日がその繰り返しだったんです。
そういった経験を通して、“できると思ったら絶対いける”という自信が生まれて、29歳の今も、その成功体験を心の支えに、“あれもできるようになりたい”“これもできるようになりたい”って欲張っています(笑)」
――朗らかさ、一途さ、鷹揚さ、ユーモア。エピソードの端々から、そんな彼女の美点が零れ落ちる。

「いつかはアメリカでも活動したいですけど、今のところ、アメリカの人を笑わせたいというよりは、それを見ている日本の人が笑ってくれてるかな。好きな男性が、もしオンエアを見ていたら、私のことを好きになってくれるかな、とか(笑)。そんなことを想像します。結局は、日本で接している人のことが頭にある。
アメリカのお客さんはあったかかったですし、笑ってもくれましたけど、私が、めっちゃおもろい返しができてるわけじゃないこともわかっています。笑いについても勉強しなきゃダメだと思いますし、世界に出ていくには、そもそも英語ももっと勉強しないと。でも、アメリカのお笑いを勉強するというよりは、自分が面白いなと思うことを、英語にして伝えたい。今、日本語でやっているコントとか、受ける受けない関係なくやってみたい。
日本でも最初は、『何がやりたいの?』って思われてたと思うんです。でも、『私はこの笑いが好きやねん!』って続けていたら、だんだん受け入れられた。今だって、『笑わせてない、笑われてるだけ』とめっちゃ言われますけど、『そうやぁ、それでええやん!』と思います(笑)。あまり深く考えんと、笑ってくれるなら、なんでもどんなんでもええやん、って。
楽しい、アホ、面白い。それでハッピーなんやから、私自身も普段からそうありたい。『受けへんからやりたくない』じゃなく、滑るならどこまで滑れるのかを追求するぐらいの気持ちで(笑)。カッコつけずに、これからも好きなことをとことん突き詰めていきたいです」
――そう話す彼女はまるで、世界にたったひとつの楽器のようだ。見た目も特徴的で、誰が弾いても軽快でいい音が鳴るのだけれど、そのテンポ感は独特だ。そうして時間が経つと、出せる音が増えていたりもする。その響きは世界共通のユーモアに溢れ、周囲の人々を自然と笑顔にしていく。
PROFILE
ゆりやんレトリィバァ
1990年生まれ。奈良県出身。アイドルグループ吉本坂46のメンバー。大学在学中に大阪NSC35期生として入学。翌年、首席で卒業。第一回「女芸人No. 1決定戦 The W」優勝者。19年6月、『アメリカズ・ゴット・タレント』に出演し、話題となった。現在、『なるほどプレゼンター!花咲タイムズ』(中部日本放送)、『ちちんぷいぷい』(毎日放送)、『チルテレ』(BS日テレ、YouTube)、『やすとも・友近のキメツケ※あくまで個人の感想です』(関西テレビ)のナレーション、『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』(テレビ朝日)の準レギュラーなど、出演多数。他に、YouTube公式チャンネル『ゆりやんレトリィバァの世界まる出しチャンネル』、なんばグランド花月で開催される吉本芸人による『10月本公演』にも出演。
https://profile.yoshimoto.co.jp/talent/detail?id=5100
Photo:Noriko Yamamoto