実際、他者をリスペクトしない雰囲気の中では仕事の効率は下がる。同書においては、大学生を対象に行なった実験で、貶める発言を受けたグループはブレインストーミングで思いつく創造的なアイデアの数が39%少なくなった、とか、単語の並べ替え作業の段階で無礼な言葉を見ていた被験者は、順に思い出すテストの成績は86%も悪くなり、数学の問題では43%もミスが増えた、といったデータも紹介している。
一方で、笑顔が絶えず、お互いを尊重しあえ、お互いの話に耳を傾ける職場では生産性は向上するとも指摘している。

日本が世界で“一人負け”の実態
そこで気になるのが、日本の実態だ。総合人材サービス、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームである株式会社パーソル総合研究所は、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)14の国・地域における就業実態・成長意識についてインターネット調査を実施し、国際比較により「日本の就業意識の特徴」を明らかにしている。
そこで明らかになったのは、仕事に対する意欲の低い“無気力人間集団”である日本の姿である。
・日本では積極的な管理職志向がない人は78.6%にものぼる。日本人は出世意欲が最も低い。
・勤務先以外での学習や自己啓発について「特に何も行っていない」が46.3%で、14の国・地域で最も高い。2位のニュージーランドと比べて24.2ポイントも差があり、日本人は断トツで自己研鑽していない。
・今の勤務先で働き続けたい人の割合について、日本は52.4%で最下位。一方で、日本の転職意向は25.1%でこちらも最下位。日本人は、今の会社を勤め続けたいとそれほど思わないが、積極的な転職も考えてない。日本は転職後に年収が上がった人の割合が43.2%と最も低い。日本以外はいずれも6割以上が上がっている。
以上の数字だけを見ても、まさに日本だけ“一人負け”と言ってもいい特異な数字が出た調査結果である、と同報告書は指摘している。