「文脈」にも要注意
実は、インターネット掲示板における誹謗中傷の案件では、前後の投稿と合わせた文脈を考慮して事実が認定されるケースが多い。わかりやすい例えでいうと、仮にどこかの掲示板に「Y田〇郎は悪徳弁護士だ」という投稿があったとしよう。具体名が伏せ字になっていても、「悪徳山田www」「太郎マジでカス」という前後の他の投稿と合わせて読めば悪徳弁護士呼ばわりされているのは山田太郎さんであることは明らかである、という認定の仕方をするのだ。
本件でも大阪地裁は、岩上氏の前後のつぶやきと合わせて読んで文脈を見た上で、岩上氏のリツイートは岩上氏による橋下氏を批判する発言と同様に扱われるべきだと判断したのではないか。仮にそうであれば、大阪地裁の判断は、弁護士の目から見ると、通例に沿ったものだと見える。
ただし、このような裁判例が出てきてしまうと、気軽なリツイートがしづらくなってしまうことも確かだ。今後は、気に入ったつぶやきを見つけても、名誉毀損に当たりそうな場合には、リツイートではなく「いいね」をするに留めるのが無難かもしれない。過去には、「いいね」は賛同の意を示すものでしかないので「いいね」をした人による発言と同じように考えるべきではないとした裁判例もある。
どうしてもリツイートがしたい場合は、引用リツイートにして「後で読む保存用として」「賛同の趣旨ではありません」などと明記しておくと、訴訟リスクを減らせるのではないか。
第三者のつぶやきでも
次に、既に同内容の批判的な報道がなされていた第三者のつぶやきをリツイートすることが、新たに橋下氏の社会的評価を低下させたのといえるのか。まず、第三者のつぶやきをリツイートすると、何が起きるか。自分のフォロワーに対し、自分がリツイートした元となる第三者のつぶやきが公開されることになる。
何を今更当然のことを、と思われるかもしれない。
でも、例えばフォロワーが10万人いるアカウントの所有者が、山田太郎さんについてのネガティブな情報を含むつぶやきをリツイートしたら? 仮にフォロワーの半分がリツイートを見るとすると、5万人がネガティブなリツイートを見ることになる。では、その5万人のうち1割の5000人が、そのリツイートを更にリツイートしたら? リツイートをした5000人の中に、5万人のフォロワーを擁するアカウントを使っているユーザーがいたら?