カウンターカルチャーとしての韓国
前述したとおり、韓国の若者が生み出すブランドやプロダクトは、日本の若者と「相性のよいもの」である。しかし、ただ相性がよいだけでは、ここまでの熱狂は生まれない。
若者たちが韓国に熱狂するのは、若者たちの感じている「韓国のよさ」が「大人にはわからないもの」だから――つまり、「韓国」が、若い世代にとって一つのカウンターカルチャーとして機能しはじめているためだ、と筆者は考えている。ビートルズやミニスカート、「みゆき族」など過去に爆発的に普及した若者文化も、年長者が理解できなかったからこそ人気に火がついた側面があるだろう。
例えば「ハングル文字」。驚くべきことに現在日本には、韓国語教育を受けていないにもかかわらず、自分の名前程度であればハングル文字を書くことができるという若者が一定数存在する。
「ハングルを読み書きできる」ことは、過去の若者文化で喩えると「ギャル文字を読み書きできる」ということに近い。要は、自分たちと異なる文化圏の人間を区別するための「暗号」として、一部の若者たちはハングルを使用しているのだ。
また、日本の若者の間でのジェンダーに対するまなざしの変化もある。K-POPにおいては「かわいさ」ではなく「強さ」を見せる女性アイドルや、「逞しさ」ではなく「美しさ」や「儚さ」を見せる男性アイドルも少なくないが、そこに共感したり、憧れを抱くファンも多い。こうした価値観は、日本の年長者の感覚では少し理解しにくいものかもしれない。
そもそも、冒頭に記した「SNS映え」という価値観そのものが、大人にはなかなか理解できないものだろう。更に言えば「若者による若者のためのビジネス」というものは、それ自体が、大人たちの創る社会に対する反抗だと言えるだろう。