まだまだ理解されていない
「ビッグデータ」と聞いて、何を思い浮かべますか?
言葉自体が広まり始めたのは、2012年頃だったと記憶しています。しかしいまだに、単語だけが先走り、具体的な中身への理解は深まっていません。
一般向けの講演などでは、データの世界はあまりにも専門性が高く、ビッグデータについてわかりやすく説明することは非常に難しいと痛感します。
そこで私は、社内の有志たちとともにヤフービッグデータレポートチームを結成しました。私たちの使命は、データの持つパワーや面白さを一般の人々にもわかりやすく伝えるとともに、ビッグデータを活用してよりよい社会を実現することです。
このたび刊行した『ビッグデータ探偵団』(講談社現代新書)も、一般の人々がもっとデータに親しめるような面白いネタを数多く盛り込みました。
都民は年800回以上も電車に乗る
特に読んでいただきたい章は、〈日本は、「東京」と「それ以外」の2つの国からできている〉です。
富山県の漁村出身の私は、以前から首都「東京」が特別扱いされることに疑問を持っていました。多くの日本企業は東京に本社を置いていますし、「標準語」と呼ばれるのは東京の言葉です。東京を中心として物事を考える「東京セントリック思想」に対する問題意識が、このレポートの出発点でした。
たとえば、総務省と国交省のデータを元に算出すると、東京都とそれ以外の道府県の差は大きく、東京都民は年平均800回以上も電車を利用しています(全国2位の神奈川県民は年平均400回程度)。
ビッグデータを解析しても「東京 vs.それ以外」という構図が浮かび上がります。たとえば、「ヤフーで国内の主要な自動車メーカー8社がどれだけ検索されているか」というデータを都道府県ごとに示すと、日本の中でも東京の検索割合は桁外れに低くなります。
逆に「タクシー」という検索ワードに替えると、東京における注目度は極端に高くなるのです。公共交通機関が発達した東京とマイカー社会のそれ以外、ビッグデータからも両者の違いがはっきり見えてきました。
