今年のGW直前に公開された『アベンジャーズ/エンドゲーム』が世界を席巻中、その公開週を除いては、『名探偵コナン 紺青の拳』のほうが興行収入を上回り、アベンジャーズが興行収入ランキングの1位にならなかった唯一の国が日本だった――そんなニュースが当時、SNSを騒がせた。
アニメをこよなく愛する国、日本。この地で、アニメーターとして活躍するイギリス人がいる。ポール・ウィリアムズさんは来日して1年。日本のミュージックビデオ、テレビやCMなどにおけるアニメ制作に携わりながら、ヨーロッパのアニメ映画の制作にも参加している。そんな彼に、海外から見た日本のアニメの魅力について聞いた。

きっかけは高畑勲との仕事
――ウィリアムズさんはなぜ日本で活動されているのでしょうか。
ポール・ウィリアムズ(以下、ウィリアムズ ):2016年にスタジオジブリ初の国際共同制作作品である『レッドタートル ある島の物語』の制作に参加したことがきっかけです。同作では高畑勲さんがアーティスティック・ディレクターを務めていたのですが、遠い距離を挟んで彼と一緒に仕事をさせていただき、もう一度、日本で彼と一緒に仕事をしたかったんです。残念ながら、彼は亡くなってしまいましたが。
でも、そのプレミアで初めて日本を訪れた時、日本の文化やアートと人々に魅了され、アーティストとして、アニメーターとして日本で成長したいと思いました。今は日本のアニメを学んでいるところです。
――ウィリアムズさんが作画に関わった、現在公開中の『エセルとアーネスト ふたりの物語』も、イギリスとルクセンブルクの国際共同制作ですね。
ウィリアムズ:はい。ヨーロッパではアニメの国際共同制作は当たり前のものになっています。日本のアニメ界でも国際共同制作は徐々に増えていますが、いまはまだ創世記。ヨーロッパの中でも特にフランス人のアニメーターが多く日本で仕事をしていますが、ヨーロッパと比較すると、まだ多国籍とは言えない状況ですね。

――国際共同制作をすることは資金的なメリットがあると聞きますが、クリエイターサイドにとってメリットはあるのでしょうか?
ウィリアムズ:そうですね、一言で言うなら、アイディアをシェアできること。例えば、この映画ではオランダ人、スペイン人、イングランド人、スコットランド人、ウェールズ人、アメリカ人……えっと、誰かを言い忘れたら殺されちゃうな(笑)。あぁ、そうだ、イタリア人、ルクセンブルク人、ベルギー人、日本人もいましたね。
とにかく、これだけ多様な国籍のアニメーターが少しずつ自分の文化を表現しているわけです。エセルとアーネストはイギリス人ですが、彼らの表情や動作には担当のアニメーターの個性が入り混んでいるんです。