政敵のスキャンダル情報がほしい
ここまでも、大統領という最高権力者の地位を自分の私的な利益のために利用する前代未聞の行為だと思われるが、問題はさらに続く。
電話会談でゼレンスキーにクラウド社のサーバーの調査を依頼した後、トランプは「もう1つ頼みたい」と言ってから、こう切り出したのである。
「バイデンの息子についていろいろと言われている。バイデンが(息子に対する)訴追を止めた、とね。
多くの人がそれについて知りたがっている。あなたが我々の司法長官と一緒に何かできれば、それは素晴らしいことだ。バイデンは自分が(息子への)訴追を止めたと豪語しているんだが……ひどい話だよ」
衝撃的な発言だった。
2020年の大統領選挙で最大のライバルになりそうな民主党のジョー・バイデン元副大統領について、その足を引っ張りたいからスキャンダル集めに協力してくれ、と頼んでいるのだ。それも、他国の指導者に……。
「前回はロシア、今度はウクライナの力を借りて政敵を叩くのか!」
会談記録を読んで、多くの人がそう思ったことだろう。
2016年の大統領選挙では、トランプがロシア政府に介入を依頼したわけではない。モラー特別検察官の報告書もそれは認定していない。
しかし、ロシアの介入を黙認した疑いは高い。そして今回、公開された文書を読んでも、それは事実だと推測できる。