2019.10.25

名門企業に社長解任を求めた“令和の村上ファンド”の「素顔」

メガバンク3行を巻き込んでゴタゴタ
松崎 隆司 プロフィール

3メガバンクがどちらにも融資

大量保有報告書では、アルファレオHDは株式の取得資金を自己資金7435万円と三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行から計40億円を借り入れて調達したことを明らかにしている。三行は、いずれも乾汽船の主要取引銀行だ。

「三菱UFJは旧三和銀行時代から懇意しているところだし、三井住友銀行もまた旧神戸銀行や旧三井銀行時代から親しい関係にあった。旧住友銀行出身者も今は非常に懇意にしているはずです。みずほ銀行はもともと旧富士銀行と親しく、三井住友銀行と2メインだったのですが、一時融資額が減少。それでも再び融資残高を増やしている。いずれも非常に深い関係にある金融機関だ」(メガバンク幹部)

 

そんな懇意にしているメインバンクが、事実上の乗っ取りをしかけている投資ファンドに資金提供するなんてことがあるのだろうか。

「メガバンクがリスクの高い投資ファンドに資金を貸し出すということはあまりない。まして主要取引銀行がアクティビストに資金提供するというのは道義的には背任行為であり、前代未聞の行為だ」(金融業界関係者)という。

3行に事実関係を確認したが、「顧客情報であるのでお答えできない」(みずほ銀行広報担当者)と事実関係に対する言及を避けた。

しかし、金融業界に詳しい事情通がこうした融資の裏事情について次のように語る。
「乾汽船の取引は東京の本店マターなのですが、投資ファンドに融資しているのは名古屋の支店や営業部なのです。決裁も本店を通さずに名古屋支店の支店長クラスの権限でおこなわれるようなのです。おそらくこの投資ファンドの背後には名古屋の有力企業がいて、そこが何らかの資金繰り事情から乾汽船株を担保に金を借り、それが大量保有報告書に出たのではないでしょうか。大量保有報告書だけを見れば、まるでメインバンクがこの乗っ取りを後押ししているかのようにも見えます。投資ファンドの本尊はそれを狙ってあえて銀行の名前を使ったのではないでしょうか」(金融業界関係者)

その後アルファレオHDはさらに買い増し、9月6日には27.6%(直近では28.15%まで増加)まで買い進んだことを発表。同時に6月の定時株主総会の決議取り消しの訴えを起こし、臨時株主総会の招集を会社側に要請した。

これについて会社に問い合わせたところ、「株主総会は適法に行われたものであると確信しており、当社の考えを主張してく所存です」(乾汽船広報担当者)

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