「ラグジュアリー」というと、「華美」で「きらびやか」な印象。でも真のラグジュアリーとは、表面だけではなく、「内面」「本質」があってこそ生み出されるものです。私たちはそれを「日本発ラグジュアリー」と名付けました。

その代表的な存在として登場いただいたのが、後藤久美子さん。え、後藤久美子さんは華やかで美しい「ラグジュアリー」そのものじゃないとおっしゃる方も多いことでしょう。しかし、今回みなさんと分かち合いたいラグジュアリーは、穏やかで、削ぎ落された洗練、「日本発のラグジュアリー」です。

それは、「飾らない」ラグジュアリー。「日常」のラグジュアリー。これみよがしでなく、「人を思いやる」「穏やか」にする、そして愛される「ほんもの」。また伝統や歴史にしばられない「今」を生きるラグジュアリーなのです。そして後藤久美子さんこそがその「日本発のラグジュアリー」を象徴する方なのです。

 

長年、フランスやスイスに暮らす後藤さん。国際人ではあっても、まったく「かぶれ感」はありません。だからこそ、日本のよさも外国のよさも、よく見て、知って、また国内外の声も聴いたその上での「日本のいちばんのラグジュアリーは人だと思います」(本誌インタビューより)という名言が説得力を持つのです。飾らない本来の後藤さんが、いかにこのテーマにふさわしいか、撮影秘話を通してお伝えします。

撮影秘話①
すっぴん顔は、たじろぐ美しさ

撮影終了後、メイクをすっかりオフしてインタビューに臨んでくれた後藤さん。その美しさに、長年、たくさんの美しい方と接してきた私も、たじろぎました。輝きの強さが一段と増す、という感じです。

もちろん、自然なメイクアップを施された撮影中の姿も美しいのは当然のこと。でも、ひとことひとこと、真剣に言葉を選ぶ姿――しかも自分のことではなく、いかに何が、誰が素晴らしいかを伝えるための、そのひたむきで生き生きした表情は、メイクをしていないときこそ、本来の、後藤さんの「人を思いやる」魅力をダイレクトに、伝えてくれるのかもしれません。

表紙の飾らない笑顔が、今回の撮影では、素顔の本来の魅力に最も近い印象です。今号のテーマ「日本ラグジュアリー」は、日本のオーセンティックなラグジュアリーについて、様々に研究。「オーセンティック」には、「ほんもの」のほか「本来の」という意味もあります。

シャツ ¥39000、スカート ¥196000/マディソンブルー Photo by KAZUYOSHI SHIMOMURA(UM)

後藤久美子/1974年生まれ。東京都出身。現在はスイスのジュネーヴ在住。出演作映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』が、12月27日に公開。あらゆる世代の女性が見て、心に染み入る、美しいシーンの連続となっている。日本映画を代表するシリーズの、さらにその「新作」の素晴らしさを、後藤さん出演によって、堪能したい。

撮影秘話②
シンプルな黒シャツ姿で、つぶやいた一言

今回の日本ラグジュアリーのスタイルは、すべて「日常」でラグジュアリーを感じられる、さりげない洗練が光るものばかり。質のよいシンプルな黒シャツとスウェードのスカートをまとって現れた後藤さんは、「これ、いつもの私ね」とつぶやきました。そう、きっといつもの、日常の後藤さんに近いスタイルなのでしょう。

また、このスタイルは、誰もが気負うことなく毎日着ることのできる、またワクワクした気持ちで着てみたいスタイルです。アクセサリーやジュエリーで飾ることもなく、すっ、と立っただけの姿に、撮影スタッフ一同、ため息がもれました。この「削ぎ落された洗練」も、海外のファッション関係者が、日本の美意識として感動するところだということが、ほかの取材でも見えてきました。