2019.11.03
# 格差・貧困

「ホームレスは臭いから排除」と言う人が抱えている「強烈な不安」

支援活動に携わる私が見てきたもの
小川 芳範 プロフィール

私たちの目の前にさっと現れ出て「きょうのご用件は?」、そう尋ねます。「生活保護の申請です」と答えると、ここでお決まりの質問です。

ご住所はどちらでしょうか?」

一見イノセントなこの問いかけは、きわめて巧妙な「玄関払い」でありえます。想像してみてください。これまでの人生でほぼ足を踏み入れたことのないお役所という場所、社会的スティグマをともなう生活保護申請に、いままさに踏みだそうとしているのです。そんな状況で役所の人の口から出た「住所」という言葉をあなたはどう理解するでしょうか。

本籍地? 住民票の登録地? 居住地? 三つすべてが同じ人にとっては、何でもない問いでしょう。そもそもそんな区別すら思いつかないかもしれません。でも、ホームレス状態にある人が単独で申請に行けば、十中八九、(かつての)住民票登録地を答えます(はい、彼らにもかつて家はあったのです)。

そして、多くの場合、それはいま彼がいる福祉事務所の所管する地域ではありません1。すると、彼にこんな答えが返ってきます。「うちでは申請できないですから、そちらの役所へ行ってくださいね」。絶句して、路上へと踵を返す人がほとんどです。そして彼はもう二度と役所へ足を向けないかもしれません。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

今回の事件を最初に伝えた支援団体の一連のツイッター投稿では、乾パンやタオルとともに指定避難場所である近隣の小学校の地図を配布していたところ、一人の男性から「その小学校に行ったけど、自分は○○に住民票があるから断られた」と聞かされたとありました。

*1  以下、便宜上「彼」を使いますが、言うまでもなく、当事者のジェンダーは男性に限られるわけではありません。

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