2019.11.22
# DNA・RNA

科捜研の「致命的失敗」とは?ニッポンのDNA鑑定は問題だらけだった

マリコさん、それは使えません!
ブルーバックス編集部 プロフィール

足利事件の教訓とは、DNA鑑定によって冤罪をつくってはならないということだ。

菅家さんは無罪となったが、1992年に福岡県飯塚市で女児2人が殺害された飯塚事件では、MCT118法によって被疑者と、被害者に付着していた体液のDNA型が同じとされ、死刑判決が下った。そして、足利事件のDNA再鑑定の報道からわずか11日後に刑が執行されてしまった。

このほかにMCT118法によるDNA鑑定が行われた事件は141件あり、そのうち鑑定結果によって有罪とされた被告が8人いるという。もし、こうした事例の中に、足利事件と同じ過ちがあるとしたら、それこそ取り返しがつかない。

【写真】鑑定結果によって有罪とされた事例に同じ過ちが会ったとしたら…
  鑑定結果によって有罪とされた事例の中に同じ過ちがあるとしたら取り返しがつかない photo by gettyimages

これからのDNA鑑定

現在、MCT118法が犯罪捜査に使われることはなくなった。かわって、4塩基ほどの短い鎖長の繰り返しパターンで鑑定する「STR」という方法がとられているが、これにもいくつかの欠点がある。なかでも分解が進んだDNAには対応できないということは大きな問題だろう。

STRなどの繰り返しの回数だけではなく、SNPやインデル多型を採用するにしても、これまでの膨大な犯罪者データが使用できなくなるという問題や、採用している鑑定キットの特許問題などを解決しなくてはならない。

しかも日本の科捜研のDNA鑑定には、致命的な欠陥がある。

それは、通常の核DNAよりもはるかに感度がよく、わずかなDNA量でも鑑定可能なミトコンドリアDNAの鑑定が許可されていないことだ。米国から日本にDNA鑑定技術が導入された当初の制約が、いまだに残っているのである。

人気テレビドラマ「科捜研の女」では、主人公の榊マリコ研究員の発案でミトコンドリアDNAを鑑定する場面があったが、残念ながらフィクションでしかない。他殺体や戦没者遺骨など、条件が悪い遺体ほど威力を発揮するミトコンドリアDNA鑑定が使えないことが、日本の科捜研の大きな足枷となっているのだ。

これからのDNA鑑定において大事なのは、「設備や手法が進歩しても、疑うことを忘れない」ということである。

DNA鑑定の技術の進歩は目覚ましい。機械化や自動化はいっそう進むだろう。

膨大なDNAの塩基配列を短時間で読み解いてくれる「次世代シーケンサー」は、犯罪捜査ではまだ活用されていない。だが、わずかな血痕や組織片さえあればヒトの全配列をたちどころに読んでくれるこの新手法は、近い将来にはきっとDNA鑑定の主役になっているだろう。事前に除去すべき細菌などの混入したDNAの問題も、人工知能(AI)が試料の中から必要な情報だけを選んでくれるようになるだろう。

だが、それでも、操作するのは人間である。人間は機械の前では、疑いを忘れた動物であってはならない。