「僕が一生全力でお守りしますから」
鴨場でのプロポーズから1ヵ月半ほどが過ぎた、11月28日。雅子さまは東宮仮御所を訪れた。その日、まだ返事をすることができなかった雅子さまに対して、陛下が贈られたのがあの有名な言葉だ。
「皇室に入られることには、いろいろと不安や心配がおありでしょうけれども、雅子さんのことは僕が一生全力でお守りしますから」
真摯でまっすぐな陛下のその言葉が、まだ迷いの中にいた雅子さまの心に、小さな明かりを灯したのかもしれない。
それから10日ほど後、雅子さまの29歳の誕生日。午前0時すぎ、小和田家の電話のベルが鳴った。誰よりも早く誕生日を祝いたいという陛下からの電話だった。
プロポーズの返事について、まだ悩んでいると言う雅子さまに、陛下は、自分も深く悩んだと打ち明けた。
「何をそんなにお悩みになったのですか」
そう問いかける雅子さまに、陛下は正直な想いを告げた。
「僕としては、雅子さんにぜひとも皇室に来ていただきたいと、ずっと思っているけれども、本当に雅子さんのことを幸せにしてさしあげられるのだろうか、ということを悩みました」
どこまでも誠実でやさしい想い。
陛下は「未来の天皇」としてではなく、ひとりの「男性」として雅子さまを愛し、その気持ちが、ついに雅子さまの心を動かしたのだ。「未来の皇后」ではなく、ひとりの「女性」としての心を。
