大学教員の採用方法は、国立大学と大規模な私立大学などでは公募が主流になっている。これは国立大学法人化以降、文部科学省が推進してきたからだ。
確かに全国のすべての大学が教員を公募すれば、現在就職が困難と言われているポスドクや非常勤講師にも、就職の機会が広がる可能性がある。
しかし、それはあくまでも選考が公平・公正に行われればの話である。
日本には、公募による大学教員の選考が正しく行われているかどうかをチェックする仕組みはない。書類選考で落とされてもその理由は本人にはわからず、仮に不正があったとしても、泣き寝入りするしかないだろう。
この現状に対し今年6月、教授の公募に書類選考で落とされた男性が、選考のプロセスを明らかにするよう求める訴訟を起こした。問題が起きた舞台は、早稲田大学大学院のアジア太平洋研究科だ。
この裁判が起きるまでの経過を見ることで、大学教員の公募の問題点を考えてみたい。
実績はあるのに、書類選考で落選…?
裁判を起こしたのは、都内の私立大学専任の教授で、早稲田大学で非常勤講師もしている男性Aさんだ。中国政治を専門にしているAさんは、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で2016年度に実施された教授の公募に応募した。
Aさんがアジア太平洋研究科の教授の公募に臨んだのは、これが2回目だった。前回は面接まで残ったことから、自分の経験や実績、研究業績から考えれば、書類選考は通るだろうと考えていた。
ところが、書類選考の結果は落選。Aさんとしては意外な結果だった。
早稲田大学で非常勤講師をしていることもあり、公募がその後どうなったのかという情報は、断片的ながらAさんの耳に入ってきた。書類選考を通過して面接に残ったのはわずか3人だったという。

同時に聞こえてきたのは、選考過程の公平性を疑わせるような情報だった。
この公募は、ある教授の定年退職に伴って行われるものだったが、「退職する前任者が公募の選考委員会に出席し、選考について何らかの発言をしたのではないか」という話が耳に入ったのだ。