中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出、衝撃の全貌

「弾圧マニュアル」も作られていた
奥山 真司 プロフィール

「経済発展させてもロクなことがない」

習近平の方針転換は、前任者の温家宝、さらには自身の父である習仲勲がとってきた、少数民族自治区に対する経済発展を通じた融和・発展政策から、大きな転換を図ったものとして注目すべきであろう。

このような「権力基盤を固めるためには経済発展を捨て、警察力を増強して監視体制を強化すればよい」という政策の歴史的先例として有名なのが、中南米のハイチで独裁体制を敷き、親子そろって30年以上統治してきたデュヴァリエ大統領(在任1957-71年)だ。

彼は政権につくと、すぐに開発政策をゼロにして国民の大半が貧困にとどまるようにしただけでなく、私設の警察組織である「トントン・マクート(現地語で「麻袋おじさん」の意)」を使って政敵を追い落とし、国民を強い監視下に置くことによって長期政権を実現した。

このような「経済発展よりも監視強化」という独裁者の技術については、習近平も実によく理解しているようで、文書の中には「冷戦で最初にソ連圏から離れた国々は、経済的に豊かであった」との記述もある。

その実例として、習近平はベルリンの壁を最初に崩壊させた東ドイツやバルト三国、そして比較的豊かだったが分裂して後に内戦に至った、ユーゴスラビアなどの例を挙げている。

つまりこの文書の内容が正しければ、習近平は「ウイグル人を経済的に発展させてもロクな結果にはつながらない。今後は経済的に締め付け、監視を強化すべきだ」と考えているということになる

ただし、ニューヨーク・タイムズ紙の記事のコメント欄を見ると、「現実に、中国はいまだに新疆ウイグル自治区を含む西部への投資を続けている」とする意見があり、この点をもって「この記事はフェイクニュースだ!」という指摘も出ていることは念のため明記しておくべきかもしれない。

 

イスラム教を「病気」扱い

4つ目に触れておくべき論点は、北京政府がイスラム教に触れ過激化した人間を「病気」として扱っており、それを「治療」できると考えている点である。

宗教や思想を「病気」(原文では「病毒」)として扱うことは(建前であっても)多文化主義を奉じる西洋諸国においては信じがたい、受け入れられない考え方であるが、習近平を筆頭とする中国共産党体制では、この考え方はマニュアルのレベルまで落とし込まれ徹底されている。

新疆ウイグル自治区の街カシュガルにあるモスク(Photo by gettyimages)

もちろん、このような強制収容所での「再教育」がどこまで効果のあるものなのかは誰にもわからない。だが少なくとも中国共産党には「信仰を教育(洗脳)によって是正できる」という考え方が実際にあり、かつそれは十分正当化できるものだと考えられているようだ。

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