『TVタックル』のある回で、テリー伊藤と大竹まことが、タッグを組んで田嶋先生に轟々と反論する場面があった。ところが、それまで寡黙を貫いていたビートたけしが自分の考えをしゃべりはじめた途端、彼らは態度を豹変させた。いきなりお通夜のような空気になってうつむき、“殿”の意見に粛々と耳を傾けだした。

彼らが笑っちゃうくらい相手を見てしゃべっていたのか、それとも意図的な編集による印象操作なのかはわからない。ともあれ『TVタックル』において築かれたたけしの知識人としての権威は、こういったさり気ない編集による積み重ねだったのだろう。番組サイドが細やかに気遣ってたけしのイメージを作り上げたように、田嶋先生の印象をもっとポジティブにコントロールすることだってできたはずだ。でもしなかった。

田嶋先生は、テレビによって不当にネガティブなイメージを世間に広められた被害はこうむっていても、罪を問われるようなことはなにもしていない。功罪があるとすれば、それはテレビの方だろう

-AD-

たけしも読んでいたかもしれない
名著『愛という名の支配』

ちなみにこのころのビートたけしはいかなる話の流れでも、いちばん賢く見える、中庸のスタンスをとっていた。そしておそらく田嶋フェミニズムを理解し、男性パネリストの発言がただの性差別であることを見抜いていた。ある回でたけしは、収拾がつかなくなった男性陣を制する形で田嶋先生の味方にまわるというナイスな立ち回りをしていた。「先生、こういうことですよね?」と田嶋フェミニズムを代弁し、檀ふみに「たけしさん勉強してる!」と褒められて照れるたけしはチャーミングだった。その様子を見て思った。もしかしたらたけしも、『愛という名の支配』を読んでいたのではないか?

山内さんは同書に解説「わたしたちを幸せにするフェミニズム」を寄せている

1992年に出版された『愛という名の支配』は、田嶋フェミニズムの集大成的な一冊だ。これを読んでから『TVタックル』を見ると、ぼやけていた世界が視力2.0くらいで俯瞰できるようになる。番組での田嶋先生の発言はすべて、この本にまとめられた理論あってのものだ。刊行から27年経っているが、古びるどころか今もって最先端。私がこの本を手にとったのは2018年のことだが、あまりの面白さ、わかりやすさに仰天し、夢中になった。そしてこの素晴らしい、尊敬されるべきフェミニストを、愚かにも誤解していたことを、深く反省したのだった。