適切な行動が取れるように

さらに、「乳がん検診の適切な情報提供に関する研究」(令和元年度厚生労働省科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業)の結果が、高濃度乳房の問題を長らく受診者視点で考え続けていた、笠原善郎医師(福井県済生会病院副院長 乳腺外科・女性診療センター長)より発表されました。「デンスブレスト対応ワーキンググループ」「日本乳癌検診学会全国集計委員長」を務め、この問題を常に牽引してきた笠原医師は、こう言います。

 

「乳がん検診の結果として乳房構成(乳腺濃度のタイプ)を知らせることは、現在推奨されておりませんが、すでに15.7%の市町村が独自の判断で行っています。しかし、このうち約7割(120市町村中82市町村)では、検診での有効性が確立していない超音波検査の受診を勧めるなど適切な指導が行われていません。

乳房構成を伝える際には、『高濃度乳房について QA集』を利用して、受診者が正しく理解し行動できるように、市町村が指導する必要があります。もし伝えるのであれば、高濃度乳房か否かだけではなく、乳房の構成(脂肪性、乳腺散在、不均一高濃度、極めて高濃度)について、通知のあとに適切な行動がとれるような情報提供と合わせて行うことが大切です。

たとえば、高濃度乳房かどうかにかかわらず、病変の隠れやすさについて正しく理解できていれば、必要に応じて医療機関を受診することもできるでしょう。また、定期的に乳がん検診を受診する意識が高まります。そして、追加検査(超音波検査など)を希望する際は、メリット、デメリットを十分理解したうえで、専門の医療機関に相談して、受けることを判断することも可能です」

受診者ファーストへ

つまり、今回の会議で、乳がん検診結果の通知の仕方は、「結果を受け取ったあと、高濃度乳房を含む自分の乳腺濃度のタイプがわかり、自分の乳房の理解を深め、結果を受けて何をすべきかがわかる」ようにすることの重要性が確認されました。これからは、乳がん検診の結果の通知方法が受診者ファーストに、大きく舵を切る方向に進むのです。

高濃度乳房で心配な人は、現状では自己負担になりますが、マンモグラフィに超音波検査を加えるという選択肢もあります。マンモグラフィと超音波を併用することで、マンモグラフィ単独の約1.5倍乳がんが見つかるというデータもあります。しかし、笠原医師も指摘するように、超音波にもデメリットがあります。超音波はマンモグラフィに比べて、治療の必要のない良性の変化を拾いすぎるため、乳がん検診後の精密検査が増えてしまう…。そうした可能性があることを理解しておくことが大切です。