2019.12.05

日本、PISA読解力ランキング「過去最低」これだけ改革して、なぜ…?

「読書離れ」は止まったはずなのに
飯田 一史 プロフィール

これは文科省も同様の認識だった。

2002年8月に文科省が発表した「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の第1章では、PISAの結果を取り上げ「趣味としての読書をしない」と答えた生徒がOECD平均31.7%に対し日本は55%もいること、「どうしても読まなければならないときしか、本は読まない」と答えた生徒がOECD平均12.6%に対し日本は21.5%であることから、読書離れを指摘し、問題視している。

こうして同計画では、学校で読書習慣の確立や読書指導の充実のための取り組みとして、「朝の読書」や読み聞かせなどの取り組みを一層普及させること、各学校が目標を設定し読書習慣を確立するよう促すことを示した。

 

「小中学生の本離れ」は止まった

続いて2004年12月にはPISA2003年調査の結果が公表され、日本の子どもの「読解力」が00年調査の8位から03年調査で12位に後退したことが明らかになると、ますますこの流れは加速する。

2005年12月、文科省は「読解力向上プログラム」を発表する。ここで「読書活動を推進するためには、学校図書館の充実を図る必要がある」とした。(大串夏身監修、小川三和子『読書の指導と学校図書館』青弓社、2015年、120ページ)

このような流れを受け、文科省の「学校図書館の現状に関する調査」を見ると、小学校における読書ボランティアの活用は2005年に急増し、以降も増加を続けて2016年には8割を超えている。

また、文科省が示した2008年の学習指導要領では「ゆとり教育」批判、学力低下批判にこたえるべく、授業時間数を増やしつつ、教育過程における知識の習得・活用・探求のバランスを考慮し、創造性を重視する方向性も取り入れた──PISAが求めるようなアウトプット重視、問題解決能力重視もより進められることになったのだ。

結果、90年代後半には小中高校生の不読率(一冊も本を読まない児童・生徒の割合)や平均読書冊数が史上最悪の状態にあったのが、2000年代以降はみるみる改善され、90年代に冬の時代を迎えていた児童書市場は『ハリー・ポッター』ブームとこれらの読書推進政策の相乗効果によってV字回復を遂げた。

日本の「子どもの本離れ」は、PISAのおかげで終わったのだ。

関連記事