最高視聴率55.3%、沢口靖子の伝説の朝ドラ『澪つくし』を語ろう

ジェームス三木×川野太郎×ペリー荻野
週刊現代 プロフィール

川野 本当に靖子ちゃんの透明感は別格ですよね。僕も初めて彼女と会ったとき、「こんなフランス人形のような人がこの世に存在するんだ」とため息が出ました。いままでたくさんの女優さんとご一緒したけど、彼女を超える人は見たことがない。

三木 もうひとつ、靖子には得難い魅力があってさ、それは、演技があまり上手くないこと(笑)。実は、現場からは「1行以上のセリフは上手く言えないので書かないでください」って言われたの。

彼女の演技って、観ててハラハラするでしょ。でも、そこが良かったんだよ。駆け出しの女の子が一生懸命頑張っていると、観る側はだんだん彼女の保護者のような気分になってくる。「かをる、大丈夫かしら?」ってね。

ジェームス 三木(じぇーむす・みき)/'35年旧満州生まれ。脚本家。歌手経験を経て脚本家として開花。『父の詫び状』『独眼竜政宗』『八代将軍吉宗』『葵 徳川三代』など多くの作品を手掛ける

桜田淳子もよかった

荻野 確かに、沢口さんも川野さんも新人だったから初々しくて、純愛物語にはピッタリでしたね。見つめ合うにもキスをするにも、いちいちギクシャクするんだけど、観ているほうはヤキモキしてたまらない。妙なリアリティがあるんです。

 

でも、よく考えると、朝ドラであれだけはっきりと「純愛」を打ち出すのは珍しいですよね。民放では『毎度おさわがせします』とか『男女7人夏物語』(共にTBS系)みたいなドラマが流行っていた時代です。

ペリー 荻野(ぺりー・おぎの)/'62年愛知県生まれ。コラムニスト。愛知教育大学在学中よりラジオパーソナリティとして活動。ドラマに精通し『ちょんまげだけが人生さ』ほか著書多数

三木 「いまどき、純愛なんて」って言われたんだけどね。でも、俺はどうしても和製「ロミオとジュリエット」をやりたかったんだ。

川野 物語の中で、かをるの実家の醤油屋は「陸者」、惣吉たち漁師は「海者」と呼ばれて、互いに反目している。それゆえに二人の結婚はなかなか認められない。まさに、ロミジュリの世界ですね。

三木 この脚本を書き始める少し前に、脳腫瘍の手術をしたんだ。人生で初めて生死の境をさまよう経験をしたから、自分がいちばん書きたい物語を書こうって。それが「純愛」だった。人を愛することの美しさ、そして、震えるような切なさこそ、人間の永遠のテーマだと思ったんだよ。

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