最高視聴率55.3%、沢口靖子の伝説の朝ドラ『澪つくし』を語ろう

ジェームス三木×川野太郎×ペリー荻野
週刊現代 プロフィール

三木 なるほどね。あのときの川野君の芝居が妙に真に迫っていたのは、そういうことか。

荻野 幾多の障害を乗り越え、ようやく結ばれたかをると惣吉。結婚式で見せた二人の晴れ姿は、びっくりするほど美しくて、格好良かった。

 

「やっと結ばれて、本当に良かった」と、日本中が涙しました。ところが、ここでめでたしめでたしとならないのが、ジェームス脚本。幸せも束の間、なんと惣吉が漁の最中に嵐に遭い、行方不明になってしまう。リアルタイムで観ていた私は唖然として、しばらく完全な「惣吉ロス」に陥りました。

川野 僕も、脚本を読んで驚愕しましたね。「俺、死んじゃうの?」って。当時、NHKには「惣吉さんを殺さないで!」という嘆願書が山のように届いていたと聞いています。

三木 あの展開は反響が大きくてね。こちらとしては、「シメシメ、これでまた視聴率が上がる」とニンマリしていた(笑)。

荻野 葬儀も終え、2年ほど経っても戻らぬ惣吉に、かをるも新たな人生を歩もうと柴田恭兵さん演じる醤油屋の従業員・梅木と再婚。その矢先に、今度は記憶喪失になった惣吉が千葉に戻ってくる。梅木は嫉妬に狂い、三角関係が持ち上がったところに戦争が影を落としてきて……。

三木 我ながら、次から次へとよく考えたよ。でも後半に進むにつれ、靖子の演技もどんどん良くなってきて、家業を支えながら二児を育てる母親の風格が出てきた。かをるという役柄と一緒に成長したんだな。

川野 かをるは妾の娘だし、やっと結ばれた最愛の人も失ってしまうし、哀しいと言えばすごく哀しい運命の女性ですよね。でも、このドラマに流れる空気は決して暗くはないのが不思議です。

荻野 それはきっと、本当の「悪人」が一人も出てこないからではないでしょうか。かをるの父は、妾の娘にしたことを最期まで不憫に思っているし、かをるに辛くあたる梅木も、天涯孤独のさみしい過去を持っている。それぞれの胸中をしっかり描いているから、善悪を超えた奥行きがある。

三木 人にはそれぞれの役割や立場があって、人生にはままならないこともたくさんある。でも、だからこそ「心から愛せるたった一人の誰か」に出会えることのありがたさが身に染みる。観る人に、そういう思いが伝わっていたら嬉しいな。

川野 「澪つくし」は浅瀬に立てられる、船を導くための道標のこと。この作品は、僕にとって忘れられない役者人生の道標になりました。きっと、靖子ちゃんもそう思っているんじゃないかな。

『週刊現代』2019年11月23・30日号より

関連記事