「しっとり感」ってなんだ?メカニズムを解明、膨らむ応用への期待。

「SHITTORI」が山形から世界へ
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次に、この湿り感となめらか感がどのような物理的刺激によって発現するのかを解明するために、指のなめらかな動きを再現するオリジナルの摩擦評価装置「バイオミメティック触感センシングシステム」を開発。

野々村研究室で開発を手掛けた、世界でただ一台の摩擦評価装置「バイオミメティック触感センシングシステム」。指のなめらかな動きを再現することで、ヒトがモノに触れたときに皮膚に加わる物理的刺激を測定することができる。
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評価する材料に接触する部分には、皮膚表面に加わる力学現象をモデリングするために、人の指の構造・硬さ・表面物性を模倣した「指モデル」を開発。

女性を対象に実施した官能評価同様に、12の材料について、摩擦特性、熱物性、力学特性、表面形状などあらゆるデータを収集し、解析を重ねた。

バイオミメティック触感センシングシステムの接触部分に使用されている指モデルも、野々村研究室のオリジナル。主な材料はウレタン。ヒトの指の構造・硬さ・表面物性を緻密に再現しており、さまざまな用途に活用されている。
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そこからは、「滑り出しとその後の摩擦抵抗の大きさにギャップがあるほど湿り感が強くなる」ことと、「摩擦抵抗が一気に減少するほどなめらか感が高くなる」ことが判明。この2段階の物理現象により「しっとり感」が喚起されることがわかった。

バイオミメティック触感センシングシステムの動作部分をクローズアップ。精巧な指モデルが評価対象物に触れながらなめらかに動くことで、摩擦特性、熱物性、力学特性、表面形状、含水量などを測定することができる。
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世界に羽ばたく「SHITTORI」

野々村教授は、2018年末に研究成果を英国科学誌「Royal Society Open Science」に投稿。「しっとり」という概念が伝わりにくい英国においては検証が難しく審査に手間取ったようだが、2019年7月10日(現地時間)付けでオンライン掲載された。

それによって日本国内はもとより、イギリスや中国、スウェーデンなどからも反響が得られた。

さらに今後は、「ぬくもり」「さらさら」などの触感についても解明に取り組む予定だ。

こうした触感の物理学的メカニズムの解明は、サイエンスとしてだけではなく、工学的な価値も大きい。すでに、高級感あふれる化粧品や繊維、自動車用材料の開発に応用されているほか、よりリアルなバーチャルリアリティや、触感を感じるヒューマノイド型ロボットなどへの応用に関しても、他の大学や企業との共同研究が進んでいる。

日本人や、日本語の持つ繊細な触感をデータ化、可視化したことで、「KAWAII」や「EMOJI」のように「SHITTORI」も共通言語になりつつあるようだ。

野々村 美宗(ののむら よしむね)教授

専門はバイオ化学工学。慶應義塾大学大学院後期博士課程修了、博士(工学)。花王株式会社勤務を経て、2007年より山形大学に着任。「しっとり感」を感じるメカニズムを解明し、注目を集める。

ひととひと〉より作成。元記事はこちら

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