2020年には女性の人口の半数以上が50歳以上になる言われている現代、老々介護も問題化している。今年の11月18日にも、90代の義両親と70代の夫の介護をしながら働いていた70代女性が、義両親の夫の殺害容疑で逮捕されるという痛ましい事件があったばかりだ。
フリー編集者の上松容子さんは、両親が30代のときに生まれたひとりっ子。東京で生まれ育ったが、両親は仲良く元気で、両親の兄妹も都内にいた。しかし父ががんで急逝すると、「ていねいな暮らし」をしてきた母が一気に壊れたのだ。その後、認知症や介護、さらに「ゴミ屋敷問題」にも直面することとなる。
上松さんには、実母と一緒に暮らせない事情も抱えていた。そこで相談したのが、しっかり者として町内でも有名な、母の実家に暮らす母の実姉だった。母と暮らすことを喜んで引き受けてくれ、ほっとしたのも束の間、驚きの現状を知る。
これは、名前のみを変更したドキュメントである。
第1回「父が71歳で急死…『ていねいな暮らし』をしていた母が一気に認知症になった」はこちら
親との同居を義母に却下されていた
身内に一人暮らしの老人がいると、日々の安否確認は欠かせない。離れて住む老人の安否が使用状況でわかる、象印の無線内蔵型電気ポット「iポット(iPOT)」が発売されたのは、2001年のことだった。
大切な身内がなんとか生きて暮らしている。住まいに足を運ばなくてもそれがわかるのだから、このポットが発売されたとき、手を叩いて喜んだ家庭は少なくないだろう。

しかし、どんなに素晴らしい機能を備えた電気ポットでも、「惚け」の有無を確認することはできない。ポットが使われ、通知が来て、「ああ生きている」とホッとする。ただし生活の有り様までは見えない。では、電話で話せば状態が把握できるのか? 答えはノー。 家に行き、当人と向き合って初めて、本当の暮らしが見えてくる。電気ポットなど文明の利器の利用に加え、生身の人と直接やりとりすることは、老人をケアするときの重要なポイントだ。
さて、父が急死した直後から様子がおかしくなった我が母・登志子。本来なら私の家に引き取るのが筋というものである。当初はそれも考えたのだが、なぜ伯母に預けようと考えたのか。実は我が家にはすでに「ラスボス」がいた。義母トミ子だ。
父ががんで余命幾ばくもないとわかったとき、私たちは家を新築中だった。義父が亡くなって一人暮らしだったトミ子と、二世帯で住むことになっていた。
その家に父を呼んで最後の時を過ごさせたいと言ったとき、トミ子は即座に却下したのだ。「居場所が狭くなるのは嫌。お父さんのことは諦めて」とにべもなかった。父は家の完成も待たずに死んでしまったので、同居話はそれでおしまいだった。しかし、弱っている実の母を放置するわけにはいかない。かといって、父を拒絶したトミ子と登志子が同じ屋根の下、というのも、気持ちのいい状況ではない。
そこで、アネゴ気質の恵子伯母なら、母を頼んでもなんとかなる、と身勝手な解決方法を思いついたのだ。