「通院」で難治がんを治療する画期的方法
しかも大内氏の場合、肝臓だけではなく、ペット検査で見つかった肺の上層部にあった胸腺がんとのふたつのがんの治療を受けながら現場復帰を果たしているのだ。
宮崎医師が大内氏の当時の病状をこう説明する。
「再発した肝臓がんは手術後の再発でしたが、リンパ節近くに残された腫瘍が大きくなったもので、肝臓の内部にある肝門部リンパ節に転移したステージⅣの腫瘍でした。さらに、ペット検査で左の肺の上層部にあった胸腺がんは、患者数が少なく手術症例も少ない治療の難しい希少がんなんです」
宮崎医師はペットで撮影した写真を見ながら大内さんにふたつの腫瘍の説明をし、治療の進め方をこう話した。
「ふたつの腫瘍ともサイバーナイフで治療します。まず胸腺がんの治療を行った後、続いて肝臓がんの治療をやりましょう。仕事は休まなくても大丈夫。ふたつの治療とも通院で十分できます」。
ステージⅣの難治がんの治療を通院治療でこなせるのか。宮崎医師の言葉にも半信半疑の大内さんだったが、頷き頼るほかなかったという。

もともとサイバーナイフ治療は米国スタンフォード大学脳神経外科のアドラー教授によって、1994年に開発された放射線治療のひとつだ。
最近のがん治療はリニアック(直線加速器)、脳腫瘍の治療に行われるガンマナイフと呼ばれる定位放射線治療など、高精度の放射線治療が開発されている。いずれも病巣を的確に捉え、複数の方向から病巣にピンポイントで放射線を照射するものだ。