「意味のないクソ仕事」をする人ほど給料が高い…この大いなる矛盾

「ブルシットジョブ」とは何か
デヴィッド グレーバー プロフィール

——ブルーカラーはホワイトカラーに比べ、かなり生産性が高いといえるでしょうか。

グレーバー そういう傾向にあります。ただ、オフィスワーカーや企業の重役の生産性については、正確な統計がないといってもいいんです。もし統計があったら、ホワイトカラーの生産性が年々落ちていることがわかるでしょう。とりわけ教育やヘルスケア産業は、間違いなく生産性が落ちています。この業界の生産性低下は、やろうと思えば実証することができます。

オートメーション(自動化)のおかげで、製造や輸送の効率は飛躍的に上がりましたが、その一方で教育やヘルス産業といった他者の世話をする仕事──私はこれを福祉セクター(caring sector)と呼んでいますが──の生産性は落ちていくばかりです。コンピュータへデータや文章を打ち込む作業に追われて、本来の仕事ができなくなっているからです。

 

——どうしたら、そのようなBS職を排除できるのでしょうか。

グレーバー じつに難しいですね。BS職を排除するための委員会をつくろうとすると、さらに新しいBS職が生まれてしまうという皮肉なことが起こります。もっとも簡単な方法は、BS職に従事している人に対し、具体的な代替職を与えることです。

BS職には、本当は保育園の先生のような何か人の役に立つ仕事をしたいのだけれど、生活のために仕方なく給料の高い仕事を選択している、という人も多いです。なかには十分なお金を稼ぐために、週に3・4日は社会に役立つ仕事をして、残りの1・2日はBS職をこなすという人もいます。でも、そういう仕組みづくりをするのはなかなか厳しそうです。

——価値ある副業は、多くの人が望んでいるだけに、簡単に手にすることはできないでしょうね。

グレーバー いちばんの近道は、人の役に立つ仕事の賃金を上げることでしょう。至極わかりやすい解決策です。

無意味な仕事をなくすもう1つの手っ取り早い解決方法は、ユニバーサル・ベーシックインカムを導入することです。ユニバーサル・ベーシックインカムにはさまざまな見解があり、社会保障制度を破壊しかねない過激なものもありますが、私が言っているのは、人が食べていける最低限の現金を渡す方式です。一定の生活が保障されたうえで、いかに社会に貢献していくかは、それぞれの国民に委ねられることになります。

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