2019.12.15
# 映画

『アナ雪2』エルサの「スピリチュアルな自己実現」の奇妙さを考える

この展開は、面白くてポジティブなのか
北村 紗衣 プロフィール

そんなものがディズニー映画に出てくるのか?! と思うかもしれないが、この映画には「ホメオパシー」という言葉は出てこない。出てくるのはホメオパシーの主要論拠のひとつである「水の記憶」だ。

 

オラフは今作が始まる前に文字を学んだそうで、手当たり次第にいろいろなものを読んで雑学を身につけ、それを他の人々に披露している。その中でオラフがこだわっている豆知識に、「水には記憶がある」というものがある。この豆知識は最初はさらっと出てくるだけだが、のちのち大きな役割を果たすことになる。

オラフ〔PHOTO〕Gettyimages

このオラフが言っている「水の記憶」、実はジャック・バンヴェニストという学者が唱えた説で、水は一度溶かしたものを覚えていて、ものすごく希釈してほとんどもとの物質がなくなったような状態でも、ある程度の濃度で物質が溶けていた時と同じような性質を示す、というような話だ。この説は否定されており、バンヴェニストは諷刺の意味で2度もイグノーベル賞を受賞している。しかしながらこの話はホメオパシー治療の中で今でも力を持っている。オラフはこんな説にハマってしまったのだ。

そしてこの映画の問題は、文字を覚えたばかりでまだ若く、情報リテラシーのないオラフがホメオパシー説にハマってしまったということを、とくにそこまで問題のないことのように描いていることだ。最後にはエルサがこの「水の記憶」の話を引きあいに出して魔法を使う見せ場もある。

あくまでもファンタジーらしく、少々わざとらしくて面白おかしい設定として出てくるものではあるのだが、それでも終盤の展開を見ると、観客がホメオパシー的な考えに親しみを抱いてしまってもしかたがないようなところがある。

いくらファンタジーとはいえ、現実世界で子供に健康被害を引き起こしている代替医療をディズニー映画が面白いことのように描くのは適切だろうか? ホメオパシーにハマっている人に悪用される可能性を考えると、あまり良いこととは言えないだろう。

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