2019.12.15
# 映画

『アナ雪2』エルサの「スピリチュアルな自己実現」の奇妙さを考える

この展開は、面白くてポジティブなのか
北村 紗衣 プロフィール

サーファーガールがヒッピーになる

そしてこの映画には、ホメオパシー以外にもオルタナティヴな精神性の探求につながるモチーフがたくさん出てくる。この映画におけるエルサは、まるで60年代のカリフォルニアかどこかで新しい自分を求める、カウンターカルチャー時代の若い女性のように描かれている。エルサの自分探しは、ニューエイジ的な信仰にハマることだったのだ。

この映画のヤマ場のひとつである、エルサが自分の力を使って波に立ち向かう場面は、ロマン主義絵画を思わせるイメージがたっぷり出てくる一方、ぴっちりした衣装で波に飛び込み、失敗しつつ海をわたる方法を学ぶ動きはサーフィンを連想させる。

ビッグ・ウェンズデー』(1978)や『ハートブルー』(1991)、『ソウル・サーファー』(2011)など、サーファーたちの独特な精神文化を描いた映画はたくさんあるが、アメリカにおけるサーフィンというのは、実は信仰やスピリチュアリティと深く関連する文化を有している。

カリフォルニアのサーファー文化は60年代のカウンターカルチャーとも深く結びつき、海や自然に対する尊敬を重視する傾向がある。自然に神を見出したり、祈るような気持ちで波に向き合ったりするサーファーも多い。この場面のエルサは、言ってみればストイックに波と向き合うスピリチュアルなサーファーガールだ。

 

そんなサーファーガールのエルサが最後に選ぶのは、母の民族であるノーサルドラの人々とともに森で暮らすことだ。このノーサルドラは、一見したところ北欧の先住民族のように描かれているが、魔法を重視する文化や、自然と融和する生活スタイル、共同体で子育てをしている様子などは、60年代のヒッピーコミューンに似ているよう (現在、アメリカ合衆国では魔術による政治抵抗運動が60年代以来の盛り上がりを見せているという)。

魔術を信じるノーサルドラのコミュニティは、ちょっとネオペイガニズム(キリスト教以前のヨーロッパの自然信仰などを現代に甦らせようとする動き)の宗教団体のようにも見える。エルサの自己実現は、サーフィンをし、ヒッピーコミューンに入ることによってもたらされるのだ。この映画のエルサはまるで60年代カウンターカルチャーのヒロインである。

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