そして名古屋同様、横浜もまた、直下型だけでなく、海溝型巨大地震にも重大な警戒をしなければならない。
地震学の権威である濱嶌良吉元前橋工科大学教授が語る。
「平安時代にM8.3と推定される貞観地震が東北から関東を襲いました。これは当時の資料を見直していくと、先の東日本大震災と震源や規模などが非常によく似ています」
貞観地震の際には、その9年後、南関東で、相模トラフを震源とした相模・武蔵地震が起きている。東日本大震災は2011年に発生しており、同じパターンをたどるとすれば、2020年頃に南関東を大規模な海溝型地震が直撃することが考えられる。
大地震の連発で、横浜はどうなってしまうのか。
まず直下型地震が起きた場合に危惧されるのが、みなとみらい地区に集中する高層ビルの倒壊だ。東日本大震災では、横浜市内は震度5強の強い揺れに見舞われた。
高層の建造物は免震構造を採用しているが、この際に鉄骨の接合部や免震構造のゴム部分などにダメージが蓄積しているという。

前出・渡辺氏はこう語る。
「東日本大震災を経験した横浜の高層建造物は耐震構造が弱っていると考えられる。2016年の熊本地震は、双子地震になり2度大きな地震に見舞われたため、多くの建物は2度目の揺れで倒壊しました。
また、東日本大震災の長周期震動を経験した建造物が、直下型の縦揺れに見舞われたときに耐えられるかは誰にもわかりません。これも次の大型地震が恐れられている理由です」
横浜市の建築局は2014年に、大地震で倒壊の可能性のあるとされたマンションの85%が、耐震工事を実施していないというデータを公表している。いま大地震が起きれば、想像するよりはるかに被害が拡大することになるだろう。
埋め立て地で液状化する名古屋に対し、横浜は旭区や保土ケ谷区など住宅街となっている部分に高台が多く、山を切り崩した斜面に人口が密集しているのも特徴だ。
これらの場所では強い揺れにより、地滑りのように斜面が崩れて住宅街全体が崩壊する大惨事の発生も危惧される。