提供:生活クラブ事業連合生活協同組合連合会
50年も前から、SDGsと同じような理念を持って活動してきた「生活クラブ」。まだ一般的ではなかった社会的責任や環境への配慮などを当たり前のものとし、持続可能な生産と消費のために、課題を一つずつ解決しながら発展してきました。その歩みから、私たちが学べることは多いのです。
なにを、どのように、消費するか
未来のための選択をする
容器包装ごみを減らすため
リサイクルからリユースびんに
高品質で安心安全な食品の宅配で知られる生活クラブは、食の安全や人の健康、自然環境などに配慮した食材や日用品を共同購入している生活協同組合である。1965年に牛乳の共同購入を行ったことから始まり、独自のこだわりを追求しながら扱う食材を広げ、現在は約40万人の組合員が利用するほどの組織となった。
減農薬の米や野菜を始め、飼料からこだわっている肉や卵、国産原料を使い、化学調味料や保存料などの食品添加物不使用の調味料や冷凍食品など、ほとんどがオリジナル品。遺伝子組み換えや環境ホルモンへの対策も確実で、原材料から作り方まで明らかにしている。
残留農薬や放射能に関しては、国よりも厳しい基準を設定し、独自の放射能検査体制も確立するなど、安心できるおいしさを大切にしている。一般の企業と異なるのは、取り扱い食材の開発に組合員が積極的に関わっていること。農場や工場を見学し、ときには収穫に参加し、生産者と交流しながらより良い食品づくりに取り組んでいるのだ。
そして、生産者が持続的に生産できるよう、利用し続けることで生産を支えるという姿勢を大切にしている。利潤追求が目的の「商品」ではなく、実際に使う人の立場に立った材であるという思いを込めて、「消費材」と呼ぶことからもその姿勢が伝わってくる。
そして要求するからには、自主的に行動する。生産を支えるためにさまざまな基金や積立金を設けたり、震災などの有事にはカンパやボランティアをしたり。そこには、消費者と生産者は信頼関係で結ばれるべき対等な立場だという考えがある。
もちろん、海外産地との提携はフェアトレードが基本。適正な価格で購入することで、品質向上と現地社会への貢献の両立を目指す、日本版CSA(地域支援型農業)の草分け的存在ともいえる。生産者は、組合員による自主的な監査を受け入れ、生産工程が厳しくチェックされる。1970年代から合成洗剤の追放と石鹸の普及に取り組むなど、早くから環境問題にも対応してきた。すべては、生産から廃棄まで責任を持ち、品質のよい食材を作り続け、使い続けたいから。
現在、生活クラブは、食の安全、国内自給率のアップ、有害物質ゼロ、ごみの削減、自然資源を大切に使う、公正で責任ある原材料の調達など「生活クラブの消費材10原則」を制定している。実は70年代に提案された「消費材と消費材生産者の要件」とほとんど変わっていないそうだ。これはSDGsの内容ととても近く、生活クラブが長年、持続可能な社会を目指すという理念を持って行動してきたことがわかる。
生活クラブは、サステナブルな社会づくりには、食、エネルギー、福祉(たすけあい)という3本の柱が欠かせないと考えている。再生可能エネルギーを作るために自然エネルギー発電所と電力会社まで設立しているが、エネルギーの使用を減らすために、日々のごみ削減にも取り組んでいる。
そのためにまず容器を見直した。ガラスを細かく砕いて再形成するリサイクルよりも、同じびんを何度も使うリユースのほうが、CO2排出量も大幅に減り、環境への負荷が減らせる。そこで、醤油やみりん、マヨネーズなどの調味料や、ジャムなどの食材の容器を数種類で統一。Rびんと名づけ、宅配時に回収して効率的にリユースしているのだ。
生活することは消費すること。どんな未来にしたいか、次の世代へなにを手渡せるか、は私たちの生き方にかかっている。生活クラブが実践していることを知ると、社会の常識までもが変わってきたことに気づく。身近な生活の中にある課題から、世界を変えることはできるのだ。
提供:生活クラブ事業連合生活協同組合連合会
●情報は、FRaU2020年1月号発売時点のものです。
Photo:Akiko Baba(still) Text & Edit:Shiori Fujii