2019.12.22
# 中国

ネット規制で奇怪に進化、中国独自の「SNS文化」が世界に拡大中

検閲下でも、政治情報空間が形成される
野口 悠紀雄 プロフィール

無視できないSNSの政治的側面

いかに検閲がなされているとはいえ、誰もが発信できるメディアが存在すれば、常識的には 国の民主化・自由化につながるはずだ。

ところが中国では、そうした動きが一向に生じない。なぜなのか、不思議なことだ。ただし、これはSNSが政治的に無意味だと言うことではない。

 

「微博現象」と言われるものが、しばらく前から生じている。2012年2月から3月にかけて起きた薄熙来事件がその例だ。ここで微博が重要な役割を果たした。

薄熙来は、当時、重慶市共産党委員会書記。外資導入による経済発展やマフィア撲滅運動などで注目されていた。2012年秋の中国共産党第18回全国代表大会で、中国の最高指導部である共産党中央政治局常務委員会入りの可能性があるとされていた。

ところが、かつての腹心である王立軍が、2012年2月に、アメリカ領事館に亡命しようとして未遂になったという事件が発生した。さらに、妻によるイギリス人実業家殺害や、不正蓄財などのスキャンダルが報じられた。

王が北京に移送されたとの情報が、ほぼリアルタイムで微博に流れた。当局による猛烈な削除と書き込み者の拘束にもかかわらず、情報は止まらなかった。

中南海で起こっている共産党内部の権力闘争が、きわめて正確に、しかも時間遅れなしに、流出してしまったのだ。

政府高官も、ネット情報に敏感にならざるをえなくなった。この事件以来、「政府高官は、朝起きると微博で自分の名前を検索し、なければ安心して他の人の名を調べる」、などと言われるようになった。

現在、香港で続いている中国政府への抗議デモに関連しても、SNSを使った情報戦が展開されている。

政府側が報道機関を装った不正アカウント を用いて、偽情報を流して世論誘導をしている疑いがあるという。

他方、反政府側も、デモ隊を排除する警察の動画を投稿するなどして、政府側の行為を公開している。

反政府派の抗議デモは、通信アプリ「テレグラム」などのSNS経由で始まるのが普通だが、6月に、その運営会社が中国から大量のデータを送りつけられる攻撃を受け、デモを妨害されたと発表した。

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