2019.12.22
# 中国

ネット規制で奇怪に進化、中国独自の「SNS文化」が世界に拡大中

検閲下でも、政治情報空間が形成される
野口 悠紀雄 プロフィール

ビジネス展開に活用

中国でのビジネスでは、SNSの利用が重要とされる。中国では、まずSNSで評判をチェックし、情報交換をした上で製品を購入するといわれるからだ。

日本のアパレル企業や電気メーカーが、Weiboにアカウントを持ち、中国人向けのプロモーションを行っている。

自治体も訪日旅行客の増加を求めて、SNSの活用に力をいれている。中国人がターゲットの場合、微博がもっとも有効だとされる。

 

TikTokが起こした「動画革命」

通信環境が向上し、動画が快適に見られるようになるにつれて、SNSもテキストから写真へ、そして動画へと変わってきた。

すでに5G時代に入りつつある中国では、これから動画メディアがますます発展していくだろう。

中国のテレビ番組は、政府の厳しい検閲があるため、面白いものが少ないと言われる。これも、動画の人気を高めている要因だ。

中国の3大動画サービスは、つぎのものだと言われる。定額会費と広告収入によって運営されている。
 
1.iQIYI(愛奇芸・爱奇艺/アイチーイー:百度傘下)
2. Youku(優酷・优酷/ヨウクー:アリババ傘下)
3. テンセントビデオ(騰訊視頻:Tencent傘下)

全く新しい動画アプリとして、「TikTok」がある。音楽にあわせて15秒のショートムービーを音楽付きで撮影し、投稿する。現在150の国と地域で利用され、75の言語に対応している。2018年7月には、世界の月間アクティブユーザーが2億人に達した。つまり、TikTokは中国発の全世界的メディアになっている。

利用者は、10代のユーザーが圧倒的に多く、20代がそれに続く。中高生を対象としたメディアだ

われわれの世代には全く理解できないものなのだが、単に10代の一時的な流行ではなく、世界的なヒットの起爆剤になっている。
 
TikTokは、アメリカの若者の間でも人気だ。それを示しているのが、全く無名だった20歳のリル・ナズ・Xの”Old Town Road”が全米シングルチャートで、19週連続1位という史上最長記録を達成し、2019年最大のヒット曲となったことだ。

テレビなどのタイアップや、大掛かりなプロモーションがあったわけではなかった。火がついたきっかけは、TikTokに投稿された動画だった。
 
TikTokが受け入れられる背景には、高度の技術がある。AIの機械学習を用いて、ユーザーが最も興味を持っているコンテンツを提供するのだ。

これを提供している「Bytedance(バイトダンス、字節跳動) 」の創業者で、TikTokを2016年9月にスタートさせた張一鳴氏は、36歳のソフトウエア・エンジニアだ。その純資産は、162億ドル(約1兆7600億円)にのぼり、中国で13番目に裕福な人物だとされる。

こうしたメディアが中国で生まれたことは、驚き以外の何物でもない。時代は既に大きく変わってしまっているのだ

2017年、バイトダンスは、アメリカに拠点をおいていた音楽ビデオの投稿アプリ、ミュージカリーを約10億ドル(約1080億円)で買収した。

アメリカ議会は、TikTokでデータ流出や投稿内容の中国当局による検閲などの疑いがあるとしている。

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