子どもの7人に1人が貧困と言われる。しかし「今晩、飯を炊くのにお米が用意できないという家は日本中にないんですよ」と語ったのは自民党の二階俊博幹事長だったし、大学入試改革において民間英語試験を入試制度に組み入れるかどうかのとき、「自分の身の丈に合わせて勝負してもらえば」と語ったのは萩生田光一文部科学大臣だった。ここに見えるのは政治家たちの意識と「貧困の実態」との大きなギャップではないか。
山本太郎が新党「れいわ新選組」を立ち上げ、参院選に臨んだのが2019年春のこと。朝日新聞記者の牧内昇平さんは、当初は彼を「単なる目立ちたがり」だと思っていたという。しかし妻の勧めで演説を聞き、取材を進めるうちに、「本当に苦しい人たち」の多くが苦しい中での寄付をし、その集合体が4億円の寄付になったということを実感するようになった。
過労死など労働環境の取材を続け、『過労死:その仕事、命より大切ですか』の著書もある牧内氏は、「生きづらさ」を感じる人々が山本氏に希望を託していると痛感したのだ。
そこから、なぜこの「れいわ現象」は起きたのか、という視点で取材をし、まとめたのが『「れいわ現象」の正体』(ポプラ新書)だ。牧内さんが出会った「山本太郎に救われ、支えている人たち」はどのような人たちなのか。
発売を記念し『「れいわ現象」の正体』より抜粋掲載する第2回。今回はシングルマザーの末っ子として育ち、貧困ゆえに大学卒業ができずにもがいている女子大生を紹介する。

「若者の政治ばなれ」なんてない
わたし自身、山本太郎氏とれいわ新選組を全面的に信頼しているわけではない。不安定なところはあると思っている。しかし、できたばかりの政治団体に これだけのお金が集まる、しかも生活が苦しい人が身を削って寄付している、という現象は日本社会においてとてもまれなことであり、それだけで大きく報じる価値がある。
この頃感じていたのは、若い人たちの中で、れいわ新選組に関心を寄せる人がたくさんいることだ。
世の中ではいまだに「若者の政治ばなれ」などと言う人がいるが、そんなのはオジサンオバサンたちの空想に過ぎないと、わたしは思う。いまの若者たちは、たとえば1981年生まれのわたしの世代に比べて、よほど考えている。バブル崩壊後の「失われた20年」しか知らない彼らは、将来の日本がバラ色ではないことを体感的に学んでいる。政治でもなんでも、使えるものはすべて使わないと生活が苦しくなるのを知っているのだ。その結果、若者たちは自分の頭で考えて行動するという作法を身につけている。わたしはそう考えている。

貧困のループから抜けだそうともがく 20 代女性を紹介する。