むしろ文系男性で顕著な保守化
しかし実際のところ、権威主義的態度は、むしろ文系の大卒男性で強まる傾向をみせている。このことを2015年の全国調査データ(以下、SSP2015調査)で確認しておこう。みていくのは、先ほどの権威主義的態度を偏差値得点化したものである*5。なお、詳細な分析結果の解釈や議論については、以下の分析結果のもとになっている、渡辺(2017)を参照してほしい。
図1 権威主義的態度の高まり
まず、図1をみてみると、基本的にはいずれの層でも権威主義傾向が強まっていることが確認できる*6。ただし、男女別で見てみると、女性では非大卒層と大卒層の権威主義化がほぼ同程度(=傾きがほぼ平行)で進行しているのに対して、男性では、非大卒層に比べて大卒層の権威主義化の傾向が著しい(=傾きが急)ということがわかる*7。
こうした男性大卒層の権威主義化傾向は、とりわけ20代・30代の若年大卒男性に明瞭にあらわれている(図2)*8。従来、若年大卒層は、戦後の様々な社会運動を通じ、社会の中でもとりわけ反権威主義的と考えられていた。だが、男性については、むしろ今日では保守的な位置を占め、大卒層の権威主義的態度は非大卒層のそれと似通ってきつつあることが読み取れる。
図2 若年高学歴層に顕著な権威主義化(男性)