アイドルは日本のインフラ
同じ社会に生きていても、人によって見えている世界や関心の対象は、大きく異なります。ある事象が、私にはハッキリと大きく見えているのに、あの人にはまったく見えていない。もちろんその逆もあります。
私は学生の頃に心理学を専攻していて、人の関心の在り処や「好き」の方向性にもともと興味がありますが、それらをダイレクトに把握できるのは検索データを分析する大きな魅力です。
世の中の動きや人々の関心という点では、エンタメ系の分析もこれから挑戦してみたい分野です。たとえば、アイドル。私は、アイドルは男女問わず、もはや「日本のインフラ」だと思っていて、多くの男女を悲しみから救っていると思います。
過去にはAKB48の総選挙の結果を予測したこともありますが、今度は、某男性アイドルグループについての分析にも挑戦したい……と、密かに計画しています。
ビッグデータはロマンあふれる「化石」
検索ワードのデータの他にも、世の中にはあらゆる種類のビッグデータがありますが、ビッグデータの分析からわかることには、ざっくり分けるとミクロとマクロの両面があります。
前者については、ライフログのようなものを想像してみてください。個人の日々の生活の様子や健康状態などを細かく記録して蓄積することで、究極的にはパーソナルアシスタントAIのようなものの開発につながります。
他方で、大量に集積されたデータからは、社会の構造や全体像を俯瞰的に把握できます。マクロで捉えてわかったのは、社会のインフラや法律と、人々の関心や世論に、タイムラグがあるということでした。人の意識や関心が大きく変わっているのに世の中の仕組みが追いつかないこともあるし、その反対に、制度や法律の変更に人の心が適応できていないこともあります。
今の社会において何が課題で、これからどうしていくべきなのか――データからそのヒントがわかると良いと思います。
私自身がより関心があるのはマクロのほうです。私は古代史も好きなのですが、地層や化石からは、当時の人々の生活の様子が推定できますよね。地層に埋もれた化石が、昔の人々の行動履歴のようなものだとすると、今、リアルタイムで生成されているIT系のアクセスログや購買履歴も、古代の史跡や化石と遠くで繋がっていると言えるのではないでしょうか。
私たちが地層から過去の人々の姿を分析するように、遠い未来の人たちが、たとえばある日の天気のデータと人の位置情報のデータを照らし合わせて、「この日、この地域で天気が悪かったのだな」と分析しているかもしれません。そう思うと、ロマンを感じませんか?