井上尚弥の父が語った…ドネア戦で見えた、その強さを支えるもの
世界を制するために必要なこと(前篇)ジャッジへのアピールの必要性
――2019年11月7日、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)のバンタム級決勝で、井上尚弥選手がノニト・ドネア選手に判定勝利した一戦は、米『リングマガジン』誌、英『ボクシング・シーン』誌、世界ボクシング協会(WBA)、米スポーツ専門局ESPNの4冠で年間最高試合に選ばれました。さらには英国の公共放送BBCからは、尚弥さんが年間最高選手に選出されました。
一方、同時に行われたWBCバンタム級王者統一戦では、暫定王者の井上拓真さんは正規王者ノルディーヌ・ウバーリに敗れました。
親御さんとしては、なんとも微妙な結果になってしまったのではないかと拝察いたしますが、尚弥さんの激闘のドネア戦を振り返っていただく前に、拓真さんの試合を、今どのように捉えられているのか、まずお話しいただけますでしょうか。
井上真吾(以下:真) じつは相手がウバーリとなった段階で、自分的には3・7ぐらいで拓真のほうがきびしいかなと思っていました。その前の試合(ペッチ・CPフレッシュマートとの暫定王者決定戦)が、自分の評価としては拓のワースト・ワンだったんです。なので、そこからどれくらいレベルを上げていけるか、をテーマにトレーニングに入りました。最終的には、5分5分まで持って行けたかな、と思っていました。
結果としては負けましたが、内容は悪くはなかった。ペッチ戦よりは進歩してるんで。
試合を見返しても、あれだけのスコアの差は付いていないと思う。
ただ、何が足りなかったかというと、アピールの仕方と、あと荒々しさ。
拓の方が、丁寧でいいボクシングをしていて、相手のパンチは外した上で「ぽん」と当ててるんですよ。でも向こうは、ちゃんと当たっていなくても、「うっ、うっ」と声を出しながら大きいパンチを振り回してきて、こちらが1発当てると2発3発と、当たらなくても返してきた。で、そのラウンドをどちらに振り分けるかとなると、全部ポイントが向こうに行った。
相手の方が、ジャッジへのアピールに長けていた。
そういうところが足りなかったことは認めて、拓もこれからは、どうやればジャッジにアピールできるかを考えなければならない。丁寧にボクシングをするだけじゃなくて、時には雑だと思われるくらいにワイルドになることも必要。そうすれば、もっとパンチも効かせられると思うんです。
――前回のこのサイトへのインタビュー(8月10日公開)でおっしゃっていた、「バカになる」ということですね。
真 そうです。でも今回の敗戦は、自分にも勉強になりました。内容はよかったので、次にはつながる。結果はしょうがないですけど、本人もやる気があるので。
今回の敗北は受け入れた上で、今までのように相手のパンチをまず丁寧に丁寧に外して、それからこっちが攻めていく・・・・・・じゃなくて、時には自分から主導権を取って攻めていく、見る前にまず自分から行って、向こうがパンチを返してきたらそれを外す、というスタイルに切り替えていこうと話し合っているところです。