20年ごとに「更新」して受け継がれる
「変わらないもの」
伊勢神宮に来てみて強く感じたのは、悠久の時間の中で、守られ、受け継がれてきたものの「尊さ」だ。
伊勢の神宮では、20年ごとに「式年遷宮(しきねんせんぐう)」という大がかりな祭事が行われ、神さまのお住まいである社殿を建て替えてお引越ししていただくことになっている。
これは、常に神さまの身辺を若々しく保つことで、神さまのパワーを更新していただくためだそうだ。
新調されるのは社殿だけではない。社殿に収められている装束や神宝類も、すべてまったく同じものを、新しく作り替えるのだ。

2013年に行われた第62回式年遷宮の時には、装束525種1085点、神宝189種491点が新調されたという。
これを手がけるのは、日本の伝統工芸を担う一流の作家や匠たちだ。
式年遷宮には、社殿造営や伝統工芸の技術を次世代に伝えるという、重要な役割もあるのだ。
なんとこの祭事は、西暦690年に第1回が行われた後、室町時代に120年ほど中断された時期を除いて、約1300年もの間、繰り返されているという。
20年ごとに、ずっと……!!
前回の式年遷宮の時に費やされた資金は約550億円。なんとまあ、途方もないことだろうか。そうまでして守られてきたものだからこその「尊さ」が、この神宮の「力」なのだと思う。
同じことを、以前、バチカン市国にあるサン・ピエトロ大聖堂を訪れた時にも感じた覚えがある。サン・ピエトロ大聖堂といえば、キリスト教のカトリックの総本山だ。
その巨大で壮麗な建築物の中に立った時、長い時間と労力を費し、この寺院を創った人たちの「信仰の深さ」を実感した。
目には見えない「神さま」が、その場所には本当に居るような気がした。
サン・ピエトロ大聖堂も、伊勢神宮も同じだ。
「神さま」は、人の「信仰」が創り出すもの。そして、その「信仰」ゆえに、人はそこから「力」を得るものなのではないだろうか……?