2020.01.08
# 恐竜

冤罪で「タマゴ泥棒」にされた恐竜、中国では「大物」へ出世の理由

恐竜大陸をゆく「日本も関係してます」
安田 峰俊 プロフィール

同時代の他のオヴィラプトル類は体長がおおむね1.5メートル〜2メートル程度の範囲におさまるのだが、ギガントラプトルはなんと体長が約8.5メートル、推定体重が約1.4トン〜2.2トンという巨大さだったのだ。白亜紀初期のカウディプテリクスと比べると、体長はほぼ10倍、体重は30倍以上に達する。

ギガントラプトル徐星らが『Nature』に寄稿したギガントラプトルの報告論文より。巨大な体格がわかる

ギガントラプトルの化石からは羽毛の存在を示す直接的な痕跡は見つかっておらず、巨大な体躯を考えれば羽毛による保温が必要だったのかも疑問がある。

ただ、ギガントラプトルを報告した中国の有名恐竜学者で中国科学院古脊椎動物・古人類研究所副所長の徐星(Xu Xing)は、すくなくとも前肢には羽毛があったのではないかと推測している。

なんと日本が発見に関係

ギガントラプトルの発見の経緯はかなりユニークだ。

エレンホト市ではもともとソニドサウルス(Sonidosaurus:蘇尼特龍)という体長9メートル程度の小型の竜脚類をはじめ、3種類の新種の恐竜化石が見つかっており、2005年4月にNHKの取材チームが撮影に来ていた(なお付言すれば、体長9メートルは普通の恐竜ではかなり大型と言っていいが、体長30メートル級の仲間もいる竜脚類の場合は「小型」である)。

NHKの撮影のなかで、徐星は(ソニドサウルスの発見者である)地質学者の譚琳とともに、干上がった川底に露出していた巨大な大腿骨の化石を紹介。刷毛を使って化石をきれいにしてみせていたのだが、その過程で徐星は、この大腿骨がどうやら竜脚類ではなく獣脚類のものであることに気づく。

現場は一気に沸き立ち、それから2年の綿密な研究期間を経て、この化石は未曾有の巨大な体格を持つ新種のオヴィラプトル類・ギガントラプトルとして世界に報告されることになったのであった。

バクトロサウルス白亜紀後期のエレンホト市付近の様子を再現した内蒙古博物院の展示。手前が獣脚類のアーケオルニトミムス、奥が鳥脚類のバクトロサウルスの復元骨格で、ともに現地で化石が出土した(2015年8月筆者撮影)

一般的にオヴィラプトルの仲間は、復元図などでひょうきんな顔つきで描かれることが多い。

「タマゴ泥棒」のレッテルや体格の小ささも相まって、なんとなく「小物感」を覚えさせる恐竜なのだが、ギガントラプトルだけはその例外と言っていいだろう。ギガントラプトルの大きさは、他の恐竜でいえばジュラ紀を代表する獣脚類アロサウルスに匹敵するのだ。

近年の恐竜研究は、鳥類との関係を考察する視点から特に獣脚類が注目されている。オヴィラプトルの仲間は獣脚類のなかでも鳥類に近い種類であり、研究の視点からは面白い存在だ。今後も中国で新たに出土するオヴィラプトル類が、世界の恐竜学をさらに塗り替えていくかもしれない。

【参考文献】
「内蒙古二連巨盜龍登上《自然》雜誌網站首頁」『中国青年報道』
Xu, X., Tan, Q., Wang, J., Zhao, X., and Tan, L. (2007). "A gigantic bird-like dinosaur from the Late Cretaceous of China." Nature, 447(7146).

「恐竜大陸をゆく」バックナンバーはこちら

関連記事