なぜがんには、全身療法が必要なのか!?

「多くのがん細胞はその場でじっと留まっているわけではなく、急速に細胞分裂を繰り返しながら増殖し、組織を突き破って血液やリンパの流れにのって全身へ移動しようとします。

例えば、乳がんが乳管にできた場合、乳房を手術ですべて取ってしまえば、目に見えるがんはなくなってしまいます。ただ、これだけで、“治った”、とは言い切れないのです。なぜなら、手術で取りきったと思われたがんが、ミクロレベルで、血管や、リンパ管に忍び込んで、残っている場合があります。このがん細胞が、手術後、数か月~数年の後に、全身をめぐり、他の臓器で増殖し、目に見えるレベルになることを、“再発”や“遠隔転移”と呼びます。臓器転移を起こしたがんが、臓器障害を起こすと、生命予後にかかわります。これががんのやっかいなところです。

このように、ミクロレベルで残っているかもしれないがんや、遠隔転移を起こしたがんをやっつけるのが、全身療法である抗がん剤、薬物療法になります。

 

抗がん剤の使い方は、主に3つの方法があります。

1つ目は、抗がん剤だけでがんを治せるがんの場合。これは、血液がんや、若年者に起きる胚細胞性腫瘍などに限ります。これらのがんは非常に進行が早いのですが、抗がん剤が非常に良く効くので、抗がん剤を積極的に使います

2つ目は、手術後(または術前)に投与することで、がんの再発を予防し、治癒率を高める場合。または、放射線治療と併用して治癒率を高める場合があります。術後治療が有効ながんには、乳がん、卵巣がん、大腸がん、肺がんなどがあります。放射線治療と併用するのは、食道がん、子宮頸がん、頭頚部がんなどがあります。知っておいてほしいことは、手術後に行う抗がん剤は、決して、“念のために”とか、“やるかやらないか、どちらでも良い”というものではありません。明らかに抗がん剤の効果が証明されていて、再発予防が可能ながんで、抗がん剤は行われます

3つ目は、遠隔転移を起こしたがんに使う場合。これは、すべてのがんでの、進行がん、再発がんの治療に当てはまります。がんが発見された時点で、遠隔転移を既に起こしている場合、ステージ4のがんと呼びます。ステージ4というと、すぐに、「末期がん」「すぐに死んでしまう」などということを連想してしまうかもしれませんが、現代では、遠隔転移があったとしても、うまく、全身療法である薬物療法を行うことにより、QOL(生活の質)を高めながら、場合によっては、仕事をしながら、がんと共存することも可能になってきています」(勝俣医師)

こういったがん治療の微妙な匙加減をするのが腫瘍内科の役割だ。

ちなみに、がんになったからといって、すべての人に抗がん剤が必要なわけではない。がんの種類やステージによって、また、合併症の有無、もちろん、患者さんの個別の価値観や、希望も尊重しながら、抗がん剤治療の適応は、一人一人個別に考えられることになる。

ドラマにはさまざまながん患者も登場する。原発不明がんの患者を演じる石野真子。写真/フジテレビ