『サピエンス全史』と『ターミネーター』
『サピエンス全史』を書いたユヴァル・ノア・ハラリの新しい著作『21Lessons』によれば、21世紀社会は、いろんな仕事を人工知能=AIがこなすようになっていくらしい。
自動車の運転も、融資を判断する銀行家の仕事も、訴訟を担当する弁護の仕事も、患者を治す医療も、すべてAIに変わっていくようなのだ。
彼らは世界中の現場をつなげてネットワークを作ることが可能だし、その情報をフィードバックして全世界で同時にアップデートすることができる。ある心臓病にとても有効な術式が発見されたら、すぐに全世界の現場で共有することができる、そういう世界になるという話だ。統一性が怖いなら、それぞれの土地にあった個性を持たせることも可能である。
それが人間社会に大きな恩恵をもたらすだろう。そうハラリ博士は書く。
何だかそれはそれで良さそうな世界だけれど、でもあやしい宗教の勧誘にも聞こえてくる。おもいうかぶのは、「人工知能が人間の言うことを聞かなくなったらどうなるのか」という不安である。
SF映画ではお馴染みである。
『ターミネーター』シリーズがまさにそれだ。

『ターミネーター』の世界からみれば、このハラリ博士の言葉はやがて人類抹殺戦争を仕掛けてくる「スカイネット」を作ってしまった悪い研究者に見える。悪いというより、迂闊な研究者というべきだろうけど、でも危ない存在である。
哲学的な本を読んでいても、SF的恐怖感がまさってしまうのだ。なかなか困ったものである。