「経営者として三流、犯罪者なら一流」のゴーンは日本に何を残したか
散々コケにされた日本と日本人ゴーンは皇帝ではない
「カルロス・ゴーン逃亡」のニュースは、メディア閑散期の日本の年末を大いに騒がせた。
逃亡の方法や詳細は諸説入り乱れており、いまだ判然としないし、トルコでは関与したとされる航空会社の幹部が逮捕されている。保釈条件に違反して逃げた逃亡者=ICPO(国際刑事警察機構、インターポール)国際手配犯であるため慣例に従って、以下敬称は付けない。
犯罪の結果の懲罰を恐れる関係者の口は堅いであろうし、捜査機関による解明にも相当な時間がかかるであろう。

ただ、ゴーンが二重(多重)国籍を活用し、1000億円とも噂される蓄財の一部を使ってプロの犯罪チームを雇うなど、「一般国民とはかけ離れた特権」を駆使して逃亡したのはほぼ間違いないと思われる。二重国籍の不公平さについては、4月12日の記事「ゴーン氏妻の出国が示した、事件とは違うもうひとつの『論点』」で詳しく述べた。
したがって、フランス国民が「ゴーン逃亡に肯定的だ」などというアンケート結果を公表しているメディアの話は眉唾ものだと考えている。
実際、12月21日の記事「年金改革でパリが炎上中、日本でも改革を行えるのか?」で述べた様に、フランスのマクロン政権で次々と「庶民の反乱」が起こっているのは、マクロン大統領がマリー・アントワネット並みに庶民感覚を持たないのが大きな理由の1つだ。
その庶民感覚のなさの1つが「ベルサイユ宮殿での大統領就任式」であり、皇帝のように振る舞ったことが大いに批判されている。
ゴーンも、皇帝がごとくベルサイユ宮殿で2016年に結婚式をあげている。この時の表面的な費用は、ゴーンにとってはないに等しい金額であったが、ルノー(最終的には日産の負担になっていた疑いがある)がベルサイユ宮殿の修復費用の一部を負担する別途取り決めがあり、その費用は日本円で80億円にも達するとの報道がある。つまり、日本の裁判所が定めた15億円という金額は、ゴーンにとってははした金にしか過ぎなかったと言えるのだ。
このように貴族・王族のように振る舞う人物が、フランスの庶民に人気が高いとは思えないし、私が執行パートナーを務める人間経済科学研究所代表の有地浩も、友人のフランス人ジャーナリストから同様の話を聞いている。
可能性があるのは、日本から見るフランスとフランスから見る日本が違うということである。
もう25年程前になるが、私がクレディ・リヨネ銀行に在籍した時代、フランス人は、日本は北アフリカと同じくらい遠くてリスクの高い国だと思っていた(来日して大概びっくりしていたが……)。北アフリカは、彼らの旧植民地だから、なじみがあるのだ。
さすがに、今日ではそのようなことは無いと思うが、偏見というものは中々消えないから、「北アフリカの独裁政権のごとき日本から逃亡してきた」と思われている可能性はある。