マクロンの頭痛の種がまた増えた
マクロン政権になってから、2018年12月17日の記事「パリから始まる反グローバリズムのうねりは『世界革命』に移行するか」で述べたジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)運動に続いて、「年金改革ストライキ」という「内憂」を抱え、さらには、11月8日の記事「ブレグジットが『前進』するウラで、次はEUが『崩壊』してきたワケ」で触れた、ブレグジットやEUの混乱・停滞という外患もある。
日本との関係を悪化させるきっかけになりかねない今回の「ゴーン逃亡事件」については、「勘弁してくれ」という心境であろう。
もしフランス政府がゴーンを自国で裁きたいと思っているのなら、正式な外交ルートで交渉するはずであるから、今回の逃亡事件はフランス政府にとって寝耳に水であったと考えられる。
そもそもゴーンは、現在のマクロン政権にとって、よく言えば「過去の人」、厳しく言えば「用済みの厄介者」である。
確かに、最初にゴーンが逮捕された時には、片棒を担いだ日本人が司法取引で免責になり、ゴーンだけが悪者にされる「国策捜査」にも見える点など、フランス政府は大いに不快に感じたであろう。
しかし、現在のフランス政府にとっては、日産(および日本政府)と協力して、ルノーを成長させ、フランス経済に貢献させることが緊急の課題である。
特に、電気自動車をはじめとする先端技術においては、日産および日本政府と組まざるを得ないのであるから、「過去の人」がしゃしゃり出てきて、その友好関係を壊されたら大迷惑なのだ。
年金改革の混乱で未曽有の交通ストに直面しているマクロン大統領は、腐敗した金持ちとしてフランスの庶民に嫌われているゴーンに関わりたくない。
仕方なく、ゴーンは世界で最も腐敗した政権(国)の1つであるともいわれるレバノンに逃亡したのだが、当然治安も良くない地域であり、この逃亡が「成功」したとはまだ言えない。
レバノンの大統領は、ゴーンの日本への引き渡しを明言していないが、1月2日にはレバノンの一部の弁護士グループが、「イスラエルに入国した罪」でゴーンを起訴するよう求める報告書を検察当局に提出した。