2020.01.22
# 群論 # ガロア # 離散数学

「ガロア理論」を本気で学ぶための、1時間でわかる離散数学の基礎

一歩ずつ進めば必ず理解できます!
芳沢 光雄 プロフィール

解けない方程式の条件とは

ガロア理論に興味をもつ多くの方々は、次の定理に最も注目する。

定理 \(f(x)\)を\(Q\)上の多項式とするとき、 
   \(f(x)\)が代数的に解ける⇔\( {\rm Gal} _Q (f)\)は可解群

ここで、\(f(x)\)が代数的に解けるとは、方程式\(f(x)=0\)の根(解)は\(f(x)\)の係数と四則計算と根号記号\( ^r\sqrt{ } \)で表せることである。

詳しい定義などは記事の最後に付録としてまとめているが、「\( {\rm Gal} _Q (f)\)」は\(f(x)\)の\(Q\)上のガロア群とよばれるもので、とりあえず「可換でない単純群は可解群にならない」という認識をもっていただいて構わない。

 

可解群の例として簡単に挙げられるものは、可換群や4以下の\( n \)についての\( n \)次対称群\( S_n \)である。また、(可解群でない)非可解群の例として簡単に挙げられるものは、5以上の\( n \)についての\( n \)次対称群\( S_n \)である。

さて、上の定理も拙著では丁寧に証明を述べたが、すぐに読めるものではない。それぞれの立場でガロア理論を学ぶ多くの方々も、ガロアの基本定理と上の定理はそれなりに苦労して学ぶ。登山に例えると、苦労して頂上に辿り着いたことと似ているかも知れない。

そこで多くの方々が思うことは、「\({\rm Gal} _Q (f)\)が非可解群となる代数的に解けない\(f(x)\)の例をいろいろ見たい」ということである。

そして何十年も前から、その点に関する質問が時々寄せられてきた。質問に答えるように紹介してきたものは、筆者なりに作った例や、Erbach、Fischer、Mckayの共著論文「Polynomials with PSL(2,7) as Galois group」(J. Number Theory 1979年)である。

例1
pを5以上の素数とするとき、 \[f(x)=(x^2+p)(x-2p)(x-4p)(x-6p)⋅⋅⋅(x-2(p-2)p)+p\]とおくと、\( f(x) \)は\( p \)次多項式で、\({\rm Gal} _Q (f)=S_p \)(\( p \)次対称群)となる。よって、方程式\( f(x)=0 \)は代数的に解くことができない。
例2(Erbach、Fischer、Mckay)\[f(x)=x^7-154x+99\]の\( Q \)上のガロア群は単純群\( GL(3, 2) \)(群として\( PSL(2,7) \)と同じ)になる。

ちなみに例2の証明では、「\( 2-(7,3,1) \)デザインの自己同型群が、\( GL(3,2) \)と群として同じものになる」という性質を用いて計算機によるチェックをおこなう。そこでは次の35次の多項式が鍵となる。\[ Φ_3 (x)=\prod_{1\le i_1 \lt i_2 \lt i_3 \le 7} \left( x-(\alpha_{i_1 }+\alpha_{i_2}+\alpha_{i_3 } )\right) \](\(\alpha_1,\alpha_2,⋅⋅⋅,\alpha_7\)は方程式\(f(x)=0\)の解の集合)
要点は、\[ f(x)=x^7-154x+99 \]に対しては、\( Φ_3 (x) \)が可約(既約でない)になることである。

数年前に、桜美林大学リベラルアーツ学群数学専攻で学ぶ当時3年生の3人の学生から、

「ガロア理論を本気で学びたいのですが、本学では相当する授業は開講されていません。そこで、分かり易いガロア理論の本を先生に是非書いてもらいたいです」

と懇願され、その情熱に背中を押されて執筆したのが『今度こそわかるガロア理論』、そして今回の『離散数学入門』である。

本書が、ガロア理論を本気で理解したいという人の助けになれば幸いである。

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