台湾の選挙に日本人が「感動」する理由

彼らは選挙が社会を変えると信じている
野嶋 剛 プロフィール

台湾と日本の若者の文化の違いについては、いろいろ感じるところが多い。

昨年、台湾の誠品書店が日本に進出した。店名は「誠品生活日本橋」で、早速、いろいろな講座が開催された。「誠品講座」は、誠品書店のシンボルであり、そのブランドが広がった理由でもある。それが創業者の理念でもあった。

その伝統が日本に持ち込まれたのは素晴らしいことだ。私もいままで4回、誠品生活日本橋のイベントにゲストとして参加している。集客は悪くない。だが、回を重ねるたびに台湾との違いに気がついた。

それは若者の割合があまりに少ないのだ。私の感覚では、30歳以下の聴衆は2割以下ではないだろうか。60歳以上がおよそ半分は占めている。高齢化社会といっても、これは比率からするとおかしい。

だが、それは誠品日本橋だけの現象ではない。日本で社会問題や国際問題を議論するイベントにきてくれるのはだいたいこういう年齢層だ。

一方、私は台湾でも自分の書籍の販売のために講演や講座に呼ばれることが多いが、感覚的に若者率は7〜8割という印象である。

誠品書店 〔PHOTO〕gettyimages
 

民主主義に対する「信仰」

選挙運動についても、台湾は日本とかなり違う。若い候補や女性候補も多い。選挙集会も若者が目立つ。

台湾では、若者たちが社会問題へ熱心に語り合っている姿も見かける。彼らは「選挙や政治が社会を変えることになる」と信じているのである。だから、選挙にも参加するのだ。台湾では、90年代の民主化の開始以来、自らの努力で積み上げた実績を支えに、民主主義に対する「信仰」が根付いている。

一方、日本人においてはその「信仰」は、ほぼ完全に形骸化している。選挙や政治が社会をよりよく変えてくれることを多くの若者が信じていない。

もちろん、そうさせたのは私たち大人だ。彼らを責めるわけにはいかない。では、どうすればいいのか。私にも答えはない。

ただ、こういう話はできる。政治や選挙によって若者の意見を汲み取りながら社会が変わっていく国がある。それが台湾だと。あるいは、そこにいまの香港も加えてもいいかもしれない。

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