台湾の選挙に日本人が「感動」する理由

彼らは選挙が社会を変えると信じている
野嶋 剛 プロフィール

台湾では民進党が勝利すると、同性婚が合法化され、原発政策が止まった。中国と台湾の関係も冷え込んだ。香港についても、もし民進党政府でなければ、これほど多くの香港人が台湾に「避難」することはなかっただろう。

2008年に国民党が勝利したときは、両岸関係が大きく改善した。中国人観光客が一気に増えた。民進党を選んでも、国民党を選んでも、社会が大きく変わる。そのことが、若者たちに希望や危機感を抱かせ、政治への関心を生み出す。

 

過去に一度もない異常事態

今回、台湾の投票結果には面白い現象が現れた。

蔡英文の得票率が57.1%だったのに対して、与党民進党の比例区政党票の得票率は34.0%にとどまったのだ。蔡英文の得票数は817万票で史上最高の得票による「圧勝」と言われたが、民進党の得票はそれよりも300万票以上少ない。

過去にも、総統の票と政党の票がずれることはあったが、ここまで違っているのは過去に一度もない異常事態であった。

その理由も、今回、投票率を押し上げたとみられる若者たちの投票行動にあったとみられる。「今日の香港は明日の台湾」というスローガンに表れるように、彼らは、香港のように台湾がならないために明確に「一国二制度」にノーを表明した蔡英文総統に一票を投じた。

しかし、台湾では、いま第三勢力と呼ばれる若者中心の政党が多数誕生している。「時代力量」「台湾基進党」「台湾民衆党」「緑党」などがそれにあたる。

それぞれ主張は少しずつ違うが、基本的には、これらの政党は若者が求める同性婚の実現や環境保護、脱原発などの議題に民進党以上に熱心で、民進党に対して改革が不十分だと突き上げている立場にある。

ただ、組織力が足りない彼らは総統候補はおらず、日本と同じように比例と小選挙区を組み合わせた立法委員選挙では、小選挙区の候補もあまり出していない。

だから今回、若者たちは政党票を第三勢力に、総統票と小選挙区票は蔡英文総統に、それぞれ分裂する形で投票したのだ。

正確な数字は今後の世論調査などを待たなければならないが、若者のこうした投票行動は現場の聞き取りや台湾メディアの報道などをみてみても、ほぼほぼ間違いないことであったと言えるだろう。

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