図3を見てほしい。

これは、磯辺教授らが2015年に公表した論文(Isobe et al., 2015)のデータを用いて作図したグラフである。日本周辺海域は、世界中の海の平均値に比べ、なんと27倍ものマイクロプラスチックを含んでいたのだ。
同様のマイクロプラスチック調査が、2015年と2016年にも継続して実施されており、2014〜2016年の3年分のデータをまとめたのが図4である。

拡大画像表示
日本列島の周囲が、どこへ行ってもマイクロプラスチックだらけであることが一目瞭然であろう。
以前、拙著『日本海 その深層で起こっていること』(講談社ブルーバックス)のなかで日本海の大切さに触れ、「世界の海の先駆けとなるミニ海洋=日本海」と紹介した。
地形的に閉鎖され、独立性の強い日本海は、世界の大海洋にやがて生じる環境変化をより早く体験しやすい。まるでかつての炭鉱夫が連れていたカナリアのようだ、と記述したのだが、よもやマイクロプラスチック汚染まで先取りしているとは!
日本近海はなぜ、汚染されたのか?
それにしても、日本の周辺海域はなぜ、こんなにも汚れてしまったのだろう?
われわれが日本本土から排出してしまったプラスチックごみも当然、含まれている。だが、それだけだろうか。
海は世界中の国々とつながっている。図5は、2010年における世界各国の海洋プラスチックごみ排出の実態を示したものだ(Jambeck et al., 2015)。

拡大画像表示
色の濃い国ほど、プラスチックごみの排出量が多い。そのような国々が、対馬海流や黒潮の上流域に近い東アジアに集中していることが容易に見てとれる。
日本周辺の海洋マイクロプラスチックの起源を解明するには、日本近海だけでなく、東シナ海やフィリピン海においても、詳細なマイクロプラスチック観測データを蓄積することがまず必要だ。そのための国際共同研究が、ますます重要となるだろう。
今後につづく世代のためにも、ぜひともきれいな日本海を取り戻す必要がある。
そして、話はこれにとどまらない。太平洋でも、深刻な問題が進行しつつあるのだ。