なきぼくろのふたつ上の先輩は、夏の大会前に出場停止処分を受けて、最後の夏の予選に出ることが許されなかった。PL学園にとって、3年ぶりの甲子園出場だった。
「入学したときに三年生だった先輩から『ありがとうな』と連絡をもらいました。先輩たちのリベンジができたという思いもありましたね」
俺みたいなカスが横着したらあかん
あの甲子園から15年以上が経った。
『バトルスタディーズ』の連載が始まったのが2015年1月。なきぼくろの経験を基にしたフィクションは、いまでは週刊「モーニング」を代表する人気作になっている。
「野球の現場で起こることと日常の出来事はよく似ていると思います。自分が高校時代に経験したことよりも、いま感じたことを落とし込んで描いているというのがきっと正しい。たとえば、作者である僕がレギュラーで、連載を支えてくれているアシスタントが控え選手みたいな感じ。
年上のスタッフの人が飲みにいったときにふっと本音で話してくれる。そのときには『やっぱり、そういうこと思ってるんや』と思ったりします」
会社でも学校でも、どんな組織にもスター的な存在がいて、華々しい成績をあげる人の陰には報われない努力を続ける人が隠れているのだ。PL学園野球部で教わったことが、いまでもなきぼくろの中で生きている。
「100mのインターバル走という練習メニューがありました。100mの距離を14秒ぐらいでダッシュして、残りの46秒でジョグ。それを何本も繰り返していくんですが、そのうちに、みんな、スタートがいいかげんな感じになっていくんです。でも、僕はちゃんとスタート地点でホイッスルを待ってから走るようにしていました」