2020.02.07
# アメリカ

「中流からの脱落」に怯える“おっさん”とポピュリズムの深い関係

彼らの深い深い絶望

ここからわかるのは、稀代のポピュリストであるトランプを支持したのが、経済的にはそれなりにゆたかな生活を送っているものの、学歴が低く、黒人や移民などマイノリティの権利拡大に不満を抱き、将来を悲観している白人たちだということだ。

次いでピンカーはヨーロッパの状況を知るために、政治学者のロナルド・イングルハートとピッパ・ノリスが、31カ国268政党を分析した研究を取り上げる。そこで2人が発見したのは、欧州諸国を席捲するポピュリスト政党の支持層のなかで最多の職業は(低所得の)肉体労働者ではなく、自営業者や中小企業経営者のような「プチ・ブルジョワジー階級」だということだ。

フランス国民戦線の党首、マリーヌ・ルペン〔PHOTO〕Gettyimages
 

こうした支持者の傾向は「年輩で、信心深く、地方に住み、学歴はそれほど高くなく、人種的マジョリティ(白人)に属する男性が多い傾向がある」とされる。EU離脱を問うイギリスの国民投票でも、最終学歴が高卒の有権者の66%が離脱に賛成票を投じたのに対し、大卒以上の有権者で離脱に賛成したのはわずか29%だった。

ここからイングルハートとノリスは、「権威主義的ポピュリズムの支持者は経済競争の敗者ではなく、むしろ“文化競争”の敗者だ」と結論した。これを私なりに言い換えるなら、「高度化する知識社会から脱落しつつあるマジョリティ(白人)の中産階級」ということになる。

これらの証拠(エビデンス)から、ピンカーは「ポピュリズムは老人の運動であり、いずれ衰退する」と予想する。さまざまなデータが、20世紀になってから一貫して、どの世代もその前の世代より寛容でリベラルになっていることを示している(2005年の保守派は1980年のリベラルよりも「リベラル」だ)。

こうした傾向が今後も続くなら、「沈黙の世代(1925~1945年生まれ)やベビーブーマー(1946~1964年生まれ)がこの世を去るときには、権威主義的ポピュリズムも一緒に消え去る可能性が高い」のだ。

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